2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K02450
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
斎藤 理生 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (40431720)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 新聞小説 / 文芸欄 / 1940年代 / 織田作之助 / 大阪新聞 / けし粒小説 / 朝日新聞大阪本社 |
Outline of Annual Research Achievements |
1940年代の新聞の文芸欄について研究する上で、主に以下の3つの実績をあげた。 (1)織田作之助が1943年5月に「大阪新聞」に連載し、のち単行本にまとめた作品『清楚』で用いた方法について、当時の紙面との関わりに重点を置いて分析した。その考察を6月に大阪大学タイのチュラロンコン大学との国際研究交流集会で発表し、そこでもらった意見などを反映して論文化し、10月に査読付雑誌に掲載された。 (2)1946年6月から1947年2月にかけて、朝日新聞大阪本社から発行されていた「朝日新聞」大阪版・名古屋版に掲載されていた掌篇小説シリーズ「けし粒小説」の概要を明らかにした。「けし粒小説」は、中堅から若手まで、戦後に期待されていた作家たちが執筆した掌篇シリーズで、計27の作品が載っている。その中には坂口安吾や林芙美子など、有名な作家の全集未収録資料も含まれている。その調査内容については3月に「阪大近代文学研究」に「研究ノート」として掲載した。また、ここで得られた成果は、次年度4月に文藝誌や新聞でも報告している。 (3)1944年6月に織田作之助が「大阪新聞」に発表した随想「一流の鑑賞」(全集未収録資料)の資料紹介を3月に「阪大近代文学研究」で行った。後に「二流」を標榜した作家が「一流」の重要性を語っている、作家像の再検討を迫る資料である。 この他に、敗戦直後に創刊され、ほどなくして消えていった複数の新聞について、文藝記事の調査を始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
織田作之助が1943年に書いた新聞小説『清楚』について当時の「大阪新聞」に基づいて考察したり、やはり戦時下の「大阪新聞」の文芸記事の中に全集未収録資料を発見したりすることは、当初から計画していたことが、その通りの成果をあげたと言える。 しかし「けし粒小説」というシリーズを発見できたことが意外な成果であった。昭和21年から22年にかけて朝日新聞大阪版・名古屋版に継続的に掲載され、当時は数十万人の目に触れたはずであるにもかかわらず、その多くが忘れられていた作品(その中には坂口安吾など有名な作家のものも含まれる)を発掘することができたため、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、これまで注目されて来なかった新聞の文芸欄を確認してゆく。特に国会図書館等に保存されておらず、マイクロフィルムなどにもされていない敗戦直後の新聞資料について、細目を作成したい。その過程で、有名な作家の全集未収録資料など、社会的なインパクトの強いものが見つかれば、別に資料紹介を行うつもりである。 また、これまでに研究してきた織田作之助、太宰治ら以外の作家の手になる1940年代の新聞小説にも目を配り、分析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、貴重資料の複写代として予定していた額が、所蔵機関で複写を許されなかった(写真撮影を行わせてもらった)ために生じた。 この額は、翌年度分として請求した助成金と合わせ、物品費の一部として使用する予定である。
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