2018 Fiscal Year Research-status Report
| Project/Area Number |
17K02450
|
|---|
| Research Institution | Osaka University |
|---|
Principal Investigator |
斎藤 理生 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (40431720)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
| Keywords | 新聞小説 / 地方新聞 / 文芸欄 / 文芸記事 / 全集未収録資料 / けし粒小説 / 新戯作派 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績の中心は、「一九四七年前後の〈小説の面白さ〉―織田作之助と「虚構派」あるいは「新戯作派」―」という論文である。１９４７年には、織田作之助が死の直前に火を付けた〈小説の面白さ〉をめぐる議論が活性化する中で、「新戯作派」や「中間小説」という枠組みが成立する。そのような敗戦直後の文学の移り変わりを、当時の多様な言説を参照して検証した。その過程で、新聞に掲載された文藝記事を活用しつつ、新聞に連載された小説の役割を考察することができた。
また「新発掘・坂口安吾「復員」とその背景」および「織田作之助全集未収録資料紹介（三）「関西の文学運動」」という、共に１９４０年代の新聞に発表されていたにもかかわらず、これまで忘れられていた資料の紹介を２つ行うことができた。前者は「朝日新聞」の大阪・名古屋版に掲載された小説であり、後者は大学新聞に掲載されていた評論である。これらの資料の発掘を通じて、東京中心、一般紙中心になされることが多い新聞と日本近代文学との関係の研究に、新たな光を投げかけることができた。
さらに、台湾の大学図書館で、１９４０年代に発行された日本語新聞の中の文藝欄の調査を行うと共に、講演を２件行い、研究成果を海外の大学生および研究者に伝えることができた。すなわち元智大學では「日本近代文学と新聞小説―「けし粒小説」を中心に」という演題で、東呉大学では「昭和期における新聞と文芸の研究―その現状と課題」という演題で話した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り、１９４０年代の新聞に掲載された小説や文藝記事をめぐる論文を執筆し、資料紹介を行うことができた。中央の大手新聞に掲載された有名な新聞小説に言及するだけでなく、地方版や大学新聞といった光の当たりにくい場所に掲載されていた作品を発掘し、その意義を説明することで、計画していた通りに研究を進めることができた。
また、研究当初の予定では、１９４０年代の日本国内で発行された新聞に対象を絞っていたが、海外で発行されていた日本語新聞の調査に着手することができた。
くわえて、資料紹介の一つは昨年度に発掘した資料と併せて、「朝日新聞」に記事として紹介され、研究成果を社会に広く還元することができた（「敗戦直後、新聞の片隅に短編 「けし粒小説」林芙美子ら執筆 阪大院・斎藤理生准教授が発見」２０１８年４月１８日）。
さらに、台湾の大学で講演を行うことで、海外で日本語・日本文化を学ぶ大学生及び日本研究者に研究成果を伝えることができた。
|
| Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り研究を進める予定である。ただし実態が知られていないために詳しい調査と報告を行おうとしていた敗戦直後の新聞の一部は、予想以上に実見することが難しいことがわかった。そのため、もし予定通りに進まなかった場合、当初の予定にはなかった海外の日本語新聞の調査に手を広げる計画を構想している。
|
| Causes of Carryover |
家庭の事情ため、研究出張を1日短縮せざるを得ないことがあったので、次年度使用額が生じた。次年度の研究出張の際に使用する予定である。
|
