2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K02452
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
下岡 友加 広島大学, 文学研究科, 准教授 (30548813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳瀬 善治 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (10782328)
有元 伸子 広島大学, 文学研究科, 教授 (50202768)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 尾島菊子 / 国木田治子 / 新渡戸稲造 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者である下岡友加は、『台湾愛国婦人』掲載の新資料である尾島菊子の小説「蚊ばしら」(第60巻掲載、大正2年11月)と、国木田治子の小説「女優志願」(第60巻掲載、大正2年11月)をそれぞれ翻刻し、2本の雑誌論文として成果を公表した(「尾島菊子「蚊ばしら」翻刻・紹介」『広島大学大学院文学研究科論集』第77巻、2017.12、「国木田治子と『台湾愛国婦人』『表現技術研究』第13号、2018.3)。二人の作家については本格的な研究は途に就いたばかりであるが、今回翻刻したいずれの作品も、当時の女性が置かれた状況を赤裸々に語るものであり、史的資料としても貴重と考えられる。雑誌論文では翻刻作品の本文・内容を紹介するだけでなく、各作家の研究史における当該資料の意義、位置についても考察し、作家の基礎的な資料、年譜を補うべく論究を行った。また、広津柳浪の小説「父の故郷」の翻刻についてもほぼ作業は終了し、次年度にかけて内容の分析を行っていく予定である。 研究分担者である柳瀬善治は、『台湾愛国婦人』掲載の落語速記や講談を中心に調査を行った。その結果、雑誌で口述者と記されている落語家が実際には存在しない者である可能性が高いことが判明した。おそらく架空の号を使用して既成の速記を流用したか、無名の速記者や落語家が勝手に作者を名乗った可能性がある。このことの証明については地方に掲載された速記との照合も必要であり、さらに参考資料を収集した上で、次年度以降に雑誌論文として公にする予定である。 さらに、研究協力者である広島大学大学院生は『台湾愛国婦人』掲載の新渡戸稲造の寄稿文、特に新資料に関する考察を行った。その成果は雑誌論文として掲載決定済みであり、次年度中には公表される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に予定していた、新資料の翻刻・公開作業がほぼ計画通りに行われたため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究を引き継ぎ、研究代表者である下岡友加は広津柳浪や泉鏡花の未翻刻資料等を中心として、より多角的に雑誌資料の考察を行い、成果を学会発表や雑誌論文として公にしていく。研究分担者である柳瀬善治も前年度からの研究調査を引き継ぎ、落語・講談を中心に雑誌の広告資料等にも目配りをしながら、対象資料の分析をすすめていく。また、もう一名の研究分担者である有元伸子は日本〈内地〉の女性雑誌と〈外地〉の発行である『台湾愛国婦人』との比較を行い、女性作家・寄稿者を中心に考察をすすめる。さらに、研究協力者の広島大学大学院生は、雑誌に掲載された台湾先住民族表象に関する考察をすすめており、そうした方面からの研究の進展も予定している。
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Causes of Carryover |
研究代表者である下岡友加が海外にて発表予定であった研究内容を校務のためやむを得ず次年度へと繰り越したため、主に旅費の未使用分により、繰越金が少額発生した。既に次年度における学会発表や資料調査を国内と海外で行うことについては決定済みであり、助成金の適切な使用において問題はないと考えられる。
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