2021 Fiscal Year Research-status Report
植民者二世の記憶と朝鮮表象―旧在朝鮮日本人の戦後と文芸創作の研究
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17K02455
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
中根 隆行 愛媛大学, 法文学部, 教授 (80403799)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 植民者二世 / 在朝鮮日本人 / 外地引揚者 / 文芸創作 / 朝鮮表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、外地引揚者に関する資料整理と分析を中心に研究を実施した。埴谷雄高や尾崎秀樹など旧在朝鮮日本人に限らない植民地体験をもつ外地引揚者の戦後の言説を検証し、適宜位置づけるとともに、村松武司、森崎和江、小林勝、日野啓三、五木寛之らの文芸創作の実態把握に努めた。それとともに、現在までの日韓の先行研究についても再検討した。 そのなかで、朝鮮戦争とサンフランシス講和条約以降の戦後日本の状況に関する注視が確認でき、戦後文学における同時期の動向とともに、外地引揚者にとっての戦後についても考察している。村松武司や小林勝らについて、植民者であるという自己確認と1950年代以降の言説を詳細に検証している。特に、村松武司に関しては、鶴見俊輔や大江満雄、小林勝、呉林俊、金時鐘らとの関係も含めて、朝鮮半島での来歴や初期からの詩作、エッセイ、栗生楽泉園でのハンセン病患者との交流など詳細に検討した。その他、1950年代から60年代における関連資料の収集・分析を行いつつ、1960年代から70年代における言説や活動をとりまとめ、関連する新聞雑誌関係資料を横断的に分析した。この点については、朝鮮引揚者と在日朝鮮人との交流やネットワークなどに力点をおいて検証している。 令和3年度は、以上の項目について、それぞれの資料整理と分析を進めたが、コロナ禍のなかで国内外の資料調査や研究発表は実施することができなかった。これらについては改めて令和4年度の継続課題として、研究成果までまとめるものとしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度は、上記に記載した通り、コロナ禍の影響から国内外の資料調査や研究発表ができず、資料整理と分析が中心となり、本研究の総まとめまで進められていない。ただし、そのなかで収集した資料や取り寄せられる文献等の検証は実施しており、研究成果をまとめる準備段階に入っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、令和3年度の研究内容における未検討の部分を継続課題として、令和4年度を最終として本研究の総まとめを実施して研究成果についても発表の準備に入る予定である。
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Causes of Carryover |
令和3年度も、令和2年度と同様に、コロナ禍により、令和3年度に予定していた国内外の資料調査および成果発表を予定していた旅費が使用できなかった。これについては次年度使用額として、令和4年度に改めて研究計画を見直して使用するものとしたい。
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