2018 Fiscal Year Research-status Report
十九世紀の絵入本における画文一体構成に着目した書物(メディア)史研究
Project/Area Number |
17K02460
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
高木 元 大妻女子大学, 文学部, 教授 (00226747)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 浮世絵 / 填詞 / 地本問屋 / 仮名垣魯文 / 報条・引札 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、手元で見られる浮世絵の図録や展覧会のカタログなどから、填詞入り浮世絵を見出し、主として填詞とその書き手に関するデータベース化を進めてきた。ただ、管見に入る資料の多くは揃物の端物が多く、揃物の全貌を知るための所在調査が不可欠であり、手間暇を費やす必要があったが、発見できないことも多かった。消費された商品としての浮世絵は、完全な保存が期待できるのは、主として海外のコレクションで、幕末から明治初期に来日した西欧人が、浮世絵の芸術的文化的価値を見出してくれなければ、壊滅していた文化資源であることを痛感した。 一方、フィールドワークとしては、国内調査として三重県の石水博物館へ出向いた。未だ広く一般に公開されているわけではないが、川喜田家の旧蔵コレクションは稀覯本の宝庫である。近年中には正式な目録が公開される由であるが、幸いにも他に所蔵の知られていない馬琴の中本型読本『敵討枕石夜話』の改題本『讎同士石與木枕』の早印本などの調査が出来た。海外では、昨年調査へ行ったアメリカ合衆国のサンフランシスコ州立大学バークレイ校とスタンフォード大学へも、本研究課題以外の研究経費で出向くことができたので、昨年の調査データで不明の点を確認してきた。また、フランス国立ギメ東洋美術館図書室蔵の填詞入り浮世絵と大量の絵入本の調査をした。調査資料は目下整理中であるが、最終的なデータに活かせる資料の閲覧が出来た。 今年度の調査を通じて、絵入本とりわけ地本と浮世絵の関係を明らかにするためには、今少し十九世紀の絵入本に関する調査も不可欠であることを認識しつつあり、今後の研究の方向として留意していきたいと思う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画を構想した当初から、調査には膨大な時間が不可欠であることが予想されたため、調査点数に関しては控えめに立案した。その二年目における計画の進捗状況としては、順調に進められているといえよう。今後も資料の所在情報を蒐集しつつ、弛まず緻密な調査を継続していくことにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の進捗状況から考えて、取り分け研究計画を変更しなければならない必然性は見出せなかった。来年度も当初の計画にしたがって、地道に調査を継続していきたい。 ただし、浮世絵を所蔵する機関には、和本も多数所蔵することが多く、それらの絵入本についても同時に調査することが多かったので、来年度は調査時間の配分を考えて、より効率的に調査をしたいと思う。
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Causes of Carryover |
今年度は他の研究課題による競争的研究経費が獲得できたため、年度予算の執行残が多少出たが、来年度の研究計画を引継ぎ進めていくのに何ら問題はないと思われる。
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Remarks |
大学機関リポジトリと個人アーカイヴにて近日中に公開予定。
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