2019 Fiscal Year Research-status Report
十九世紀の絵入本における画文一体構成に着目した書物(メディア)史研究
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17K02460
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
高木 元 大妻女子大学, 文学部, 教授 (00226747)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 浮世絵 / 填詞 / 地本問屋 / 仮名垣魯文 / 報状・引札 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は仮名垣魯文の手掛けた資料を調査する機会が多かった。すでに知られている通り、魯文は多数の報状・引札を書いていたのであるから、残存資料の量が多いのも当然ではある。だが、一口に報状・引札といっても、比較的小さな文字だけの一枚刷(チラシ)から、本格的な大判浮世絵仕立てのモノまで千差万別である。
今回の研究計画で、当初問題にしたいと考えていたのは、画文一体になった〈填詞〉入りの浮世絵資料であった。しかし、今回の調査を通じて、文字だけの所謂チラシとの差異についても考察する必要があることに気が付いた。ただ、〈填詞〉入りの浮世絵仕立ての資料には、その発行に官許を得ることが不可欠なこともあり、具体的な改印や板元などの出板情報が判明することが多いが、文字だけのチラシの多くには、刊行年や印刷所や発行者の記載がなされていないことが多い。つまり、チラシの発行の母体として「地本問屋」を想定できるかどうかは確認する術が見出せず、その処理の仕方については、さらなる資料の発掘が必要だと気が付いた。今年度の調査を通じて得られた新たな問題意識の一つである。
もちろん、何事においても、具体的な調査を進めていかなければ、思いも拠らない想定外の資料に出合うこともない。其等の資料を見出さなければ、新たな疑問に遭遇できないことは当然の帰結である。地道に世界各地に散在している(従来は文学的価値を見出されていなかった)一次資料群の調査を継続することこそ、文系基礎学の存在意義だからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画を構想した当初から、調査には膨大な時間が不可欠であることが予想されたため、調査点数に関しては控えめに立案した。その三年目における計画の進捗状況としては、順調に進められているといえよう。
来年度も当初の計画にしたがって、地道に調査を継続していきたい。ただし、絵入本についても同時に調査することが多かったので、地本問屋の扱った商品としての浮世絵との差異についても考えてみたい。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の進捗状況から考えて、取り分け研究計画を変更しなければならない必然性は見出せなかった。来年度も当初の計画にしたがって、地道に調査を継続ししつつ、最終年度であるので、今回の計画で得られた成果の集約を進めていくことにしたい。
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Causes of Carryover |
今年度は年度末に計画していた海外調査が新型コロナ禍のために中止せざるを得なくなり、その残金の全てを執行することが出来なくて多少の繰越金が生じた。 来年度になっても、何時渡航が可能になるか分からないので、もし前半期に海外渡航が困難な場合は、国内機関に調査先を変更する心づもりである。
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Remarks |
大妻女子大学学術機関リポジトリ https://otsuma.repo.nii.ac.jp/ 「ふみくら」https://fumikura.net 大学機関リポジトリと個人アーカイヴにて近日中に公開予定。
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