2017 Fiscal Year Research-status Report
1930年代新聞小説の多角的研究─山本有三・岸田國士・獅子文六を中心に
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17K02462
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
平 浩一 国士舘大学, 文学部, 准教授 (00583543)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 和也 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (50467198)
後藤 隆基 立教大学, 社会学部, 教育研究コーディネーター (00770851)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 新聞小説 / 大衆 / 挿絵 / 演劇 / 文化統制 |
Outline of Annual Research Achievements |
「1930年代新聞小説の多角的研究─山本有三・岸田國士・獅子文六を中心に」と題した本研究では、新聞小説を時代・文化の集約点と捉え直し、前史から後代にも目配せをしながら、1930年代の新聞小説(作家)の影響力の形成過程を、多角的な視座から明らかにすることを目的としている。 1年目に当たる平成29年度は、研究計画に即して、主に下記の3つの点について研究実績を積んだ。 (1)本研究の基底部を成す、新聞(社)の特性と対読者戦略、挿絵の視覚的効果、読者受容、演劇との関係、「非常時」の社会背景、イデオロギーの伝播作用等について注目し、具体的な検討を行った。その成果は4本の学術論文を中心にまとめあげ、広い公開を行った。 (2)平成29年9月には、JSPS科研費・基盤研究(C)「1940年代の新聞における文芸欄の基礎的研究」(17K02450)、JSPS科研費・基盤研究(C)「昭和10年代における文学の〈世界化〉をめぐる総合的研究」(15K02243)との共催による研究会「方法論の再検討─1930-40年代の日本文学研究」を開催した。そこでは、それぞれのこれまでの研究成果を報告し、研究方法の課題点等について議論を交わし、本研究テーマの意義と位置、今後の方向性についての確認も行った。 (3)平成29年12月に開催した研究会では、本研究の中心となる山本有三・岸田國士・獅子文六の3作家について、研究メンバーが既存の研究ならびに各自の成果を報告し、さらに共同討議を行った。あわせて、次年度の研究計画・調査計画についても検討・調整を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、それぞれのメンバーの専門領域を生かす形で、多角的な観点から研究を進めている。その計画が円滑に進んでおり、初年度として、研究の基底部が着実に形成された。その成果については、初年度である平成29年度は、特に4本の学術論文を中心にまとめあげた。具体的には、以下のとおりである。 「浅井忠と〈舞台美術〉――明治三十年代京阪の演劇改良・翻案劇・新聞小説」「石井鶴三と舞台装置・序説――石井鶴三宛木村荘八書簡を補助線に」では、広い時代・地域を視野に入れつつ、明治期からの新聞小説の命脈・京阪神への注目・演劇との関係・挿絵等の考察を展開した。「「通読」される新聞連載小説――山本有三「生きとし生けるもの」「波」「風」の評価軸の形成」では、新聞社の特性と対読者戦略・読者受容等の考察を展開した。「吉川英治『宮本武蔵』〈後半〉における〝道〟――パラテクストと石井鶴三挿絵」では、文化統制・「非常時」の社会背景・挿絵・イデオロギーの伝播作用等の考察を展開した。 以上のように、幅広い対象に関する考察を複眼的な視座から進めていく、本研究体制の特性を生かす形で、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の研究成果によって形成された基底部を土台としながら、今後は、山本有三・岸田國士・獅子文六のより具体的な考察に進展させていく。すでに、平成29年12月の研究会において、現段階でのそれぞれの研究状況は報告済みであり、それをベースとしながら、詳細な作品分析へと取りかかっていく。それぞれの研究メンバーの専門領域が異なる特性を生かす形で、常に情報交換を行いながら3作家の分析を行い、それをもとに、徐々に1930年代新聞小説という大きなテーマに統合する段階へと入っていく。
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