2017 Fiscal Year Research-status Report
〈私〉性の調査と〈自己語り〉ジャンルとの比較による日本「私小説」の総合的研究
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17K02464
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
梅澤 亜由美 大正大学, 文学部, 准教授 (00710427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大木 志門 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (00726424)
小林 洋介 比治山大学, 現代文化学部, 講師 (00757297)
河野 龍也 実践女子大学, 文学部, 准教授 (20511827)
大原 祐治 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (40554184)
小嶋 洋輔 名桜大学, 国際学部, 上級准教授 (50571618)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 私小説 / 自己語り / 自伝的小説 / 日記 / 東アジア文学 / 作家イメージ / メディア / 計量的分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は当初の予定通り、3回の研究会を開催した。08月11日:主に、研究成果報告【データ篇】についての調査発表・討議を行った。12月17日:主に、研究成果報告【論考篇】についての調査発表・討議を行った。平成30年03月14日:主に、平成30年度に向けての研究計画の作成を行った。 その結果得られた主な研究実績は、以下の3点である。 ①研究成果報告【データ篇】作成ための調査、および報告。各自が担当する時代、作家について、〈内在的サイン〉(作者の登場名、職業、視点人物、自作言及など)〈外在的サイン〉(作家の年譜、伝記的事項や作者の日記、書簡情報等との照合)の調査を行い、データを作成。またそれらを研究会にて統合することにより、研究グループとして〈私小説性〉を可視化するための基準を確定することができた。 ②研究成果報告【論考篇】作成のための作業。①のデータをもとに、各自が担当する作家、および時代の〈私小説性〉の問題について分析、論考の作成を行った。これらは全体を統合し、公開の予定である。更に、これらの研究成果をもとに、〈私小説性〉可視化のためのマッピングの図表を作成することができた。以上については、すでに出版社も決定し、平成30年度に書籍として刊行予定である。 ③平成31年度に国際シンポジウムを開催するための準備。各渉外担当者が海外研究協力者と打ち合わせを行い、本研究の趣旨や状況について説明し、具体的な協力内容について各協力者と協議した。あわせて平成30年度にプレ会議を開催することとその日程、および上記の海外研究協力者を招聘することを決定した。 その他、本研究に関する研究発表や論考については、研究発表欄に記載する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の進捗状況は、総合的に鑑みておおむね順調に進展したと言える。以下3点、具体的に述べる。 ①当初の計画以上に進展した点として、平成31年度に予定していた研究成果報告【論考篇】の作業が想定よりも進展したことがあげられる。すでに全体像がほぼ完成し、平成27年度大正大学助成金を受けての「日本私小説の近現代文学史における展開の研究」から行ってきた通史的な考察をまとめた成果として、平成30年度に刊行予定である。これにより、最終年度である平成31年度には、海外研究協力者との国際シンポジウム、および「近代日本の日記文化と自己表象」の研究グループ(科研費課題:活字化された日記資料群の総合と分析に基づく近代日本の「日記文化」の実態解明、17K13397)との研究協力による成果をふまえたより発展的な研究成果をまとめることができる見通しとなった。 ②予定通りに進行しているものとしては、最終年度に予定している国際シンポジウムの準備がある。本年度は、国外の研究協力者4名と各担当者との折衝を行い、まずは来年度に国際シンポジウム開催のためのプレ会議を開催する予定となっている。 ③計画通りに進展しなかった点としては、研究成果報告【データ篇】のHPでの公開があげられる。これについては、現在のところ田山花袋、徳田秋声、志賀直哉、葛西善蔵、広津和郎、佐藤春夫、芥川龍之介、菊池寛、横光利一、伊藤整、坂口安吾、太宰治、安岡章太郎などのデータ作成が進んでいるが、調査項目や表記の統一に想像以上に時間がかかった。【論考篇】にもその一部を収録する計画だが、十分なデータとは言えない。よって、今年度はできるだけ早い段階での順次、公開を目指す予定である。 以上のように、本研究はおおむね順調に進展し、最終年度である平成31年度には当初の予定以上の成果をあげることも可能な状況と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、これまで通り個人で可能な調査を更に進めると同時に、年度内に3回の研究会を開催、以下4点の達成を目指し研究活動を行っていく。 ①研究成果報告【データ篇】公開。平成29年度に、各自が進めた〈私小説性〉を可視化するための〈内在的サイン〉〈外在的サイン〉の調査結果の一覧をデータベースにて公開していく。 ②研究成果報告【論考篇】の刊行。①の【データ篇】をもとに、各自が担当する時代、作家について分析を進め論考を執筆、研究グループ全体として明治から昭和までを見通すことが可能な論考集を刊行する。 ③8月開催予定の研究会では、平成31年度開催を予定している国際シンポジウムのためのプレ会議を行う。具体的には、中国、台湾、韓国の海外研究協力者4名を招聘し、研究代表者、分担者、協力者が成果発表および討議を行う。あわせて、平成28年度より研究交流を続けている「近代日本の日記文化と自己表象」の研究グループ(科研費課題:活字化された日記資料群の総合と分析に基づく近代日本の「日記文化」の実態解明、17K13397)と協議の上で合同ワークショップを計画している。 ④研究成果の公開の一環として、今秋の近代文学関連の学会にエントリーし、研究グループとしてのパネル発表を計画している。 上記をふまえ、最終年度である平成31年度は、国際シンポジウムを開催し、国際的、および学際的な研究成果を報告集などの形で作成し、本研究の成果を日本国内、および海外の研究者に広く普及することを目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、以下、2点である。 ①研究成果報告【データ篇】の公開が延期されたこと。データベースの公開方法について、変更が生じたため、平成29年度に計上していたデータベース作成費の300,000円ほど、および、その際のデータの移行などに使用するハードディスクの購入費の20,000円ほどの支出を平成30年度に持ち越したため。 ②8月に開催した研究会に分担者1名が校務等と重なり出席がかなわなかったため、旅費30,000円ほどが支出されなかったため。 なお、①に関しては平成30年度に、予定通りデータベースの作成を行う。
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Research Products
(5 results)