2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02469
|
Research Institution | Kanazawa Gakuin University |
Principal Investigator |
秋山 稔 金沢学院大学, 文学部, 教授 (20202559)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 励儀 同志社大学, 文学部, 教授 (90148619)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 紅葉門下の句会 / 俳句紀行「左の窓」 / 「お化け手帳」 / 「蝦蟇法師」 / 「南地心中」 / 「深沙大王」 / 「湯島詣」 / 戯曲 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、泉鏡花研究会編『論集 泉鏡花』第六集(令和3年8月30日、和泉書院)に「泉鏡花と俳句」を発表した。俳句草稿が「「照葉狂言」や「野社」などの一節を交えたもの、「妙の宮」「龍潭譚」などの小説と共通する世界を描いたもの、随筆「ありのまゝ」の成立の経緯を反映したものであることを解明するとともに、尾崎紅葉を中心とする句会の記録と参加者の覚書があることを明らかにして、句会の時期や実態を検討した。また、同じ句会において、徳田秋聲と鏡花が、どのような句を評価しているか、そのような句を詠んでいるかを比較して検証した。なおまた、俳句紀行「左の窓」のもとになった手帳(お化け手帳)を翻刻し、「風流線」「瓔珞品」の背景を卯交わせる重要な資料であることを確認した。さらに、「蝦蟇法師」の草稿48枚を整理翻刻し、慶応義塾図書館・石川近代文学所蔵原稿との連続性を検討するとともに、「蝦蟇和尚」から「蝦蟇法師」に展開する四種の草稿を整理し、検証した。 研究分担者は、ひきつづき主に戯曲について泉鏡花の自筆資料の調査を進め、「泉鏡花「南地心中」の上演―原作者と脚色者の関係をめぐって―」(泉鏡花研究会編『論集泉鏡花 第6集』2021・8、和泉書院)を発表した。明治45年1月、「新小説」に発表された小説「南地心中」は、4ヶ月後、新富座で初演、その折りに鏡花自身が書き記した脚本草稿を検証した論考である。大阪住吉大社宝の市を見学した鏡花が書き残した取材メモはすでに「〈資料紹介〉泉鏡花「南地心中」取材メモ」(「同志社国文学」91、2019・12)で紹介したが、今回の論考で、作品の素材から小説、小説から戯曲への展開を明らかにできた。鏡花初の戯曲「深沙大王」、花柳小説を戯曲化した「湯島詣」、それぞれの自筆原稿の整理も終えているので、いずれ公にする予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍で、国会図書館や慶応義塾図書館への研究出張が出来なかった。また、鏡花記念館での合同研究ができず、リモートによる打ち合わせや画像の送付による研究を余儀なくされた。 2021年度内の「成果報告書」の刊行をめざしたが、目録の校正は草稿の実物を点検せざるを得ず、対面での点検ができないため次年度に行うこととして、再延長を申請した次第である。 現在、研究代表者と分担者及び、協力者と協力して、目録の点検を行うとともに、各自論考を執筆中であり、9月には入稿し、2022年内刊行の見込みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
再延長による最終年度にあたる。現在作成中の「成果報告書」においては、草稿を中心とする原稿目録を、代表者が編集を担当した「自筆原稿所在目録」(「新編泉鏡花集」別巻二)に準拠して作成し、厳密な校正を期して、研究者の求めに答えたい。 論考として、研究代表者は、「蝦蟇法師」、「お化け手帳」等を、それぞれ翻刻を交えた論考を執筆し、研究分担者は「深沙大王」「湯島詣」の草稿にに関する論考等を収録する予定である。 「成果報告書」の年内刊行を必須として、研究の最終年度のまとめとしたい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍のために延長し、令和3年度に資料目録と論考を交えた成果報告書を作成し、刊行する予定としていたが、研究出張がままならない状況が続き、資料の収集と分析考察がはかどらなかった。また、研究協力者のサポートを受けて、資料目録案はできたが、その検証には、草稿類の確認が必要であり、年度内の刊行はむつかしいことが判明し、再延長を願い出た次第である。 令和4年度中に、草稿の目録と論考を交えた報告をを刊行し、研究者及び関係機関に配布することとした。次年度使用額の打ち明けは、印刷製本代金と配布料金を見込んだものである。
|
Research Products
(4 results)