2018 Fiscal Year Research-status Report
歌舞伎興行と近世期出版商業活動における連動性についての発展的研究
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17K02475
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
倉橋 正恵 立命館大学, 産業社会学部, 非常勤講師 (90425017)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 歌舞伎 / 興行 / 出版 / 浮世絵 / 近世文学 / 情報 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では江戸後期の歌舞伎に着目してその興行実態を解明すると共に、芸能関係出版物によって形成される出版文化が都市文化へと展開していく様相について具体的な事例を用いて明らかにすることを目的とする。 平成30年度は、近世期の歌舞伎興行に即して出版された「歌舞伎番付」についての調査と、幕末期の江戸歌舞伎上演記録に基づいた配役データベースの作成に重点を置いた。具体的には、平成30年11月にボストン美術館(アメリカ合衆国、ボストン)所蔵歌舞伎番付の研究調査を行った。調査の結果、幕末期の江戸の劇場で出された約200点の絵本番付の整理・目録化を行うことができた。これらの番付は、研究代表者による従来の調査で存在は確認されていたものの、正確な年代考証がまだ行われていなかったものである。この調査での研究成果は、立命館大学アート・リサーチセンターの「番付ポータルデータベース」(http://www.dh-jac.net/db1/ban/search_portal.php)に反映させると共に、ボストン美術館へのデータの提供によって同館で公開している所蔵品データベース(https://www.mfa.org/collections/search)にも反映されている。 また、配役データベースについては、幕末から明治期にかけての江戸及び東京の歌舞伎上演表である『続々歌舞伎年代記 乾』(田村成義編、大正11年)から、万延元年から元治元年までの配役情報(約5600件)を採取し、そのデータをもとに「続歌舞伎年代記配役閲覧データベース」(http://www.dh-jac.net/db/haiyaku/search.php)を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
歌舞伎興行の実態解明についての研究は、多様な上演関係資料についての調査・考証・検証を通して順調に進んでいる。しかし、本研究を進めるにあたって基礎資料となる『中村座日記』の資料集刊行準備が当初の計画よりも遅れている。これは、資料集の原稿となる第二段階翻字作業が予定よりも遅れていることに起因するものである。 さらに、平成30年度に予定していた歌舞伎興行と周辺の文化事象に関する国際シンポジウムの開催を次年度以降に延期したことにより、複数の研究者間での事例検討が行えていない。この点についても、当初の研究計画からは遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
『中村座日記』の資料集刊行準備が少し遅れているため、正確な原稿作成のための第二段階翻字作業をよりいっそう進めていくことを最も優先させる。また、開催を延期した国際シンポウジウムについても、次年度の開催を目指す。 その上で、歌舞伎興行形態解明のためにこれまで様々な資料ごとに進めてきた事例についての研究論文を公刊すると共に、近世における芸能情報文化と表象についてまとめた研究論文集の刊行準備にも着手する。
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Causes of Carryover |
平成30年度に開催を計画していた国際シンポジウムを、平成31年度以降の開催へ延期した。このことにより、国際シンポジウムで発表を予定していた招聘者の旅費を支出する必要がなくなったため、次年度使用額が生じた。 平成31年度には延期した国際シンポジウムを開催し、招聘者の旅費によって次年度使用額を使用する予定である。
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