2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02478
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Research Institution | Soai University |
Principal Investigator |
荒井 真理亜 相愛大学, 人文学部, 准教授 (90612424)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本近代文学 / 上司小剣 / 書誌学 / 出版 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、上司小剣(1874-1947)の著作目録と解題を作成し、その業績の全貌を明らかにすることである。 上司小剣は1902年から1947年まで、小説家としてだけでなく、ジャーナリストとしても活躍した。その著作は2500点を超える。しかし、上司小剣には個人全集がなく、著作は初出紙誌や古書でしか読めない。上司小剣の業績はほとんど埋もれたままになっている。上司小剣の業績の全貌を明らかにするためには、それらを発掘していかなければならない。 そこで第1年目は、上司小剣の著作のピックアップから始めた。既存の著作目録で最も詳しいのは、昭和女子大学近代文学研究室著『近代文学研究叢書62』(1989)の「著作年表」である。また、日本近代文学館には上司小剣の原稿、書簡、図書、雑誌・新聞、切抜などが「上司小剣コレクション」として所蔵されている。同コレクションにある著書や作品収録書、初出紙誌には稀少なものも多く、今日では入手困難なものも含まれている。さらに、同コレクションの切抜には、「著作年表」で取り上げられていない著作も存在する。よって、「著作年表」と日本近代文学館編『上司小剣コレクション目録』(2011)を照合し、今後の調査や作業のために著作リストを作成した。 その上で、今後の調査計画を立てた。そしてまず、これまでの研究で入手していた上司小剣の著作を整理し、書誌情報を記録した。次に、著書の調査に取りかかった。未確認の著書の所蔵先を調べ、現物を確認した。国立国会図書館や日本近代文学館を中心に調査を進め、著書の確認がほぼ終わった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の発表までには至らなかったが、初年度の目標であった既存の目録を照合して著作をピックアップする作業、今後の調査のために必要な著作リストの作成は終わった。さらに、これまでの研究で収集していた著作を整理し、書誌情報を記録した。また、著書の現物確認にも着手し、著書の調査はほぼ終えた。
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Strategy for Future Research Activity |
第1年目に続き、国立国会図書館や日本近代文学館等を利用し、著作の現物を確認して、書誌情報を収集する。 第2年目は明治期の著作を中心に調査を進める。上司小剣は1897年に読売新聞社に社会部の記者として入社し、『読売新聞』の記事やコラムを多数執筆している。よって、はじめに『読売新聞』を調査する。これまでの研究ですでに収集しているものもあるが、遺漏を拾っていく。次に、上司小剣が創刊した雑誌『簡易生活』を確認する。『簡易生活』は復刻版があるので、それを利用する。『簡易生活』は上司小剣が編集も担当し、未完であるが処女作「三寸」を発表している。上司小剣の思想や生活態度がよくわかる雑誌であるので、書誌情報を記録するとともに、解題をまとめる。その他『太陽』『はがき新誌』『ムラサキ』『中学文芸』『家庭雑誌』等の雑誌も調査する。雑誌については稀少なものや入手が困難なものがあるので、所蔵先を調べて、可能な限り現物を確認する。収集した書誌情報を整理し、明治期の著作目録を作成する。 上司小剣は明治期に、初めての新聞連載小説「絶滅」(のち「灰燼」に改題)、大逆事件の影響が窺える「木像」、文壇デビュー作とされる「神主」などの小説を発表している。また、『読売新聞』紙上に掲載した「その日その日」や「小さき窓より」などの特色のあるコラムもある。これらの著作について、内容を分析し、解題を執筆する。解題は初出・初刊・再録の状況、内容、同時代評価や研究状況などを簡潔にまとめる。
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Causes of Carryover |
今年度に購入を予定していた図書のうち1冊が年度末までに刊行されなかったため、次年度に購入する予定である。
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