2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02478
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Research Institution | Soai University |
Principal Investigator |
荒井 真理亜 相愛大学, 人文学部, 准教授 (90612424)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本近代文学 / 上司小剣 / 書誌学 / 出版 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
上司小剣の著作の全貌を明らかにするために、第2年目は明治期の著作を中心に調査を進めた。 1897年に読売新聞社に入社した上司小剣は『読売新聞』に記事やコラムを多数執筆している。コラムや「小剣」の署名入りで掲載された記事についてはこれまでの研究ですでに収集していたものも多かったが、その後無署名や他の筆名で発表された記事で上司小剣の文章であることがわかったものもあったので『読売新聞』を再調査した。 次に、上司小剣が主宰した雑誌『簡易生活』を確認した。その他『太陽』『はがき新誌』『ムラサキ』『中学文芸』『家庭雑誌』等の雑誌も調査した。それらの書誌情報を整理し、明治期の著作目録は大体完成した。特に「小王国」の存在が確認できたことは収穫であった。上司小剣自身が上京する以前に『阪城週報』に「小王国」という小説を発表したと証言していたのだが、これまでその現物が確認されていなかった。今回の調査で、連載第1回のみではあるが、『阪城週報』に「小王国」が掲載されている事実を確認することができた。 上司小剣は明治期に初めての新聞連載小説「絶滅」(のち「灰燼」に改題)、大逆事件の影響が窺える「木像」、文壇デビュー作とされる「神主」などの小説を発表している。また、『読売新聞』紙上に掲載した「その日その日」や「小さき窓より」などの特色のあるコラムもある。これらの著作について内容を分析し、解題を執筆した。 大正期の著作の調査にも着手した。上司小剣が『赤い鳥』に発表した童話を調査し、『赤い鳥事典』(赤い鳥事典編集委員会編,2018,柏書房)の「上司小剣」の項目を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第2年度の目標であった明治期の著作を確認する作業はほぼ終わった。さらに収集した著作を整理し、書誌情報を記録した。発表には至っていないが、明治期の著作目録は大体完成した。また明治期の主要な著作について、解題の執筆も進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
第3年目は大正期の著作を中心に調査を進める。引き続き国立国会図書館や日本近代文学館等を利用し、著作の現物を確認して、書誌情報を収集する。 上司小剣は1914年に発表した「鱧の皮」によって文壇における作家的地位を確立し、一躍花形作家となって多くの雑誌や新聞に著作を発表する。そこでまず「鱧の皮」が掲載された『ホトトギス』をはじめ、『文章世界』『新小説』『新潮』『中央公論』『早稲田文学』『解放』『改造』等の雑誌の調査を進める。 大正期にも上司小剣は『読売新聞』に「小さき窓より」や「一日一信」などのコラムを載せている。また評論や随筆、文芸時評なども多数掲載している。『読売新聞』の調査は継続し、上司小剣が執筆したコラムや記事を収集する。また、上司小剣は読売新聞社退社後『読売新聞』以外の新聞に連載小説を書くようになる。「花道」「東京」の調査はすでに終了しているが、その他の新聞連載小説を確認していく。 大正期に発表された小説、随筆、評論、アンケート等について、収集した書誌情報を整理し、著作目録を作成する。上司小剣の文壇出世作である「鱧の皮」をはじめ、上司小剣のライフワークともいうべき「東京」、「小さき窓より」や「一日一信」が収録されたコラム集『金魚のうろこ』などの主要な著作や著書については内容を分析し、解題を執筆する。
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Causes of Carryover |
残高が少額だったため。
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Research Products
(1 results)