2018 Fiscal Year Research-status Report
幕末維新期における天皇歌壇を中心とする文芸ネットワークの研究
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17K02479
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Research Institution | Otemae University |
Principal Investigator |
盛田 帝子 (飯倉帝子) 大手前大学, 総合文化学部, 准教授 (40531702)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光格天皇(上皇) / 仁孝天皇 / 孝明天皇 / 欣子内親王 / 堂上歌壇 / 近世文学 / 和歌 / 南殿の桜 |
Outline of Annual Research Achievements |
光格天皇が催した宮廷歌会の実態および譲位後の光格上皇が運営する歌壇や文化的事績を明らかにするための調査を続行すると共に、仁孝天皇・孝明天皇が光格天皇の文化的事績をどのように引きつぎつつ和歌を詠んだかということについて、特に紫宸殿前の南殿の桜の表出の仕方に注目しつつ調査を行った。調査先は宮内庁書陵部・国立国会図書館・国文学研究資料館・陽明文庫であり、宸翰類・歌集・公家日記・御会記録・詠草類などを調査・解読・整理し、必要なデータ入力を行った。その結果、光格天皇(上皇)の主催する宮廷歌会が、楽御会とともにきわめて頻繁に行われおり、修学院離宮の御幸でも行われていること、光格天皇(上皇)が仁孝天皇および廷臣への歌道指導を非常に熱心に行っており、光格上皇の影響は幕末にまで及んでいること、中宮欣子内親王の優遇や女房に対する指導も行っていたことなど、興味深い事実が明らかになった。これらについての研究成果は「光格上皇の文化的行事およびその再興」(日本近世文学会春季大会)および「天皇の和歌空間―南殿の桜をめぐって」(近世中後期上方文壇における人的交流と文芸生成の 〈場〉公開研究会:大阪大学)において口頭発表した。また、飯倉洋一・盛田帝子編『文化史のなかの光格天皇―朝儀復興を支えた文芸ネットワーク―』(勉誠出版、2018年)に「寛政期新造内裏における南殿の桜―光格天皇と皇后欣子内親王」と題して掲載発表した。また光格天皇主催の御会和歌データについては『大手前大学論集』第18号(2018年)に「光格天皇主催御会和歌年表―寛政期編」と題して、光格天皇の遺した事績については「大文匣入り尊号一件文書のゆくえ」と題して『雅俗』第17号(雅俗の会、2018年)に掲載発表した。なお、光格天皇・仁孝天皇・孝明天皇・明治天皇等の幕末・近代の天皇を含む御製のアンソロジー『天皇・親王の歌』(2019年)を発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光格天皇(上皇)の主催する宮廷歌会年表については順調に作成しているが、仁孝天皇以後の宮廷歌会年表については、未完成である。一方、光格天皇(上皇)期の宮廷歌会の状況については、当初の予想以上に詳細な実態を明らかにすることができつつあり、光格天皇・仁孝天皇・孝明天皇・明治天皇の御製についても時代背景を踏まえつつ解読をするための準備が整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
近世後期から幕末にかけての宮廷歌会資料の調査・解読・翻刻を進め、仁孝天皇が主催した宮廷歌会年表の作成を進めるとともに、光格天皇(上皇)・仁孝天皇・孝明天皇の和歌添削の実態や、近世後期から幕末にかけての宮廷歌会における中宮・女房歌人の役割について、引き続き考察を進めてゆく。
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Causes of Carryover |
光格天皇の添削資料の調査・収集のため、カリフォルニア大学バークレー校東アジア図書館に2018年度中に出張する予定であったが、国文学研究資料館の歴史的典籍NW事業の国際共同研究「UCバークレー所蔵古典籍資料のインスタレーションとキューレーション」の構成メンバーとして、2018年度同所に派遣されることになり、同館から旅費が支給されたため、科研費は使用しなかった。この分の文献調査旅費は、次年度、国内の光格上皇・仁孝天皇の宸筆添削資料の調査・収集旅費および文献複写費として使用することを既に計画している。
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Research Products
(6 results)