2017 Fiscal Year Research-status Report
上方文壇と地方談林俳諧文化圏との繋属関係の研究~海川・物流網を視座として~
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17K02480
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
森田 雅也 関西学院大学, 文学部, 教授 (10239668)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 上方文学 / 談林俳諧 / 西鶴 / 地方俳諧文化圏 / 舟運物流史 / 文学情報 / 日本文学 / 地方物流史 |
Outline of Annual Research Achievements |
談林俳諧の担い手の多くは、元来が地方の裕福な旦那衆であり、彼らは江戸時代に利権を得た新興商人が多く、地方に経済基盤と生活基盤の拠点を置き、生産物を大量に集積し、川運や湖運や海運によって、大量消費地である都市部、三都を往来していた。そのツールは、河村瑞賢が開発した西廻り航路、東廻り航路であったが、この「舟」と「海」の時代の到来時期と談林俳諧が急速に発展した頃[寛文・延宝年間(1673-81)]とが重なり合うことが判明した。本年度はその三都の中でも大坂文壇の中心で談林俳諧の始祖・西山宗因と、大坂談林派の雄として君臨していた井原西鶴の門流について精査を行った。まだ、5年計画の初年度のため、十分な成果は得られていないが、大坂談林の刊行した俳書の多くには、先述した地方談林のリーダーたちとの接点が見られ、それらを研究成果報告用ホームページであげた。まだ、それぞれの人物の文化的事跡、俳人としての活動についての掲載は完成していないが、随時調査していきたい。また、そのような地方談林俳壇の実態を知る上で、貴重な資料が蕉門活動であることもわかった。例えば、地方談林俳諧の拠点を崩し、蕉風俳諧の普及を図ることが、元禄十五(1702)年の『奥の細道』刊行に先立つ芭蕉の旅の目的であるとすれば、いかがであろうか。その逆説的仮定の見地から「奥の細道」の旅の軌跡を追跡すれば、地方談林俳壇の牙城が鮮明になるのではなかろうか。また、「奥の細道」の旅以前の芭蕉の旅は概ね内陸部にあった。それが「奥の細道」の旅では太平洋岸・北陸においても日本海岸が多い。蕉風の雄、陸の芭蕉と談林の雄、海の西鶴。同時代、同時期におけるそのテリトリーの鬩ぎ合いを追究したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は初年度のため、寛文・延宝年間(1673-81)に活躍した有名な俳人を貞門派、談林派、蕉風にこだわらず、ノミネートし、彼らの俳諧活動等について先行研究の実態を調査し直すことから始めた。具体的には事典類、評伝等は明治・大正・昭和・平成について比較し、江戸期のものもできる限り、博捜し参照した。しかし、その数は膨大であり、俳諧活動という文事であるため、不詳のままの項目が多く、難渋している。とはいうものの、ネット環境が進み、思わぬ資料が発掘でき、全体的には順調に進展しているといえる。それでも地方俳人の場合、すぐれた研究によって顕彰されている場合と手つかずの場合の差異が大きく、後者の場合、現地郷土資料など原点から調査しても不明な点が多く、思いの外、資料収集に時間を必要としている。当然ながら、現地調査が最も効率の良い調査方法であるが、十分な現地調査期間の確保が難しく、次年度以降に残された課題も多い。
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Strategy for Future Research Activity |
文献中心の作業となるので、該当資料の保管機関の効率的な調査が必要である。そのためには、デスクワークより実地調査を繰り返すとともに、東京のすぐれた公共機関については、計画的に、集中的に調査することが必要である。
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Causes of Carryover |
今年度は当初の計画にはなかった、韓国での講演、招待研究発表が各1件ずつ計2件生じたため、前倒し請求を行ったが、開催校や学会からの交通費・宿泊費等の一部補助などがあり、予定より予算執行が少額であったため、繰越額が生じた。未使用額分76,081円は前年度研究成果報告用ホームページ更新料として業者に支払われるべきものが年度またぎとなっただけで、次年度すぐに執行されるものである。
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[Book] 浮世草子大事典2017
Author(s)
森田雅也・他
Total Pages
1012
Publisher
笠間書店
ISBN
978-4-305-70847-2 C0591
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[Book] 古川柳入門2017
Author(s)
森田雅也監修・吉田健剛著
Total Pages
364
Publisher
関西学院大学出版会
ISBN
978-4-86283-24B-1 C092