2018 Fiscal Year Research-status Report
上方文壇と地方談林俳諧文化圏との繋属関係の研究~海川・物流網を視座として~
Project/Area Number |
17K02480
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
森田 雅也 関西学院大学, 文学部, 教授 (10239668)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 上方文学 / 談林俳諧 / 西鶴 / 俳諧文化圏 / 舟運物流史 / 元禄時代 / 日本文学 / 地域文化史 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、17世紀における地方談林俳諧の担い手が川運や湖運や海運によって裕福となった旦那衆であったことを実証するために実地調査、文献調査を実施した。北海道に関しては松前文化圏のみ知られているが、西鶴浮世草子には北海道の浦々の描写があるため、6月、東京・静嘉堂文庫に保管されている松浦武四郎コレクション、8月、北海道教育大学函館校の資料、北海道大学北方資料、北海道教育大学釧路校の松浦文献などを調査し、東西北海道文化交流は確認したが、北海道の川運、海運と関連付けるには至らなかった。5月、熊本を基点として玉名地域の調査を行い、木下順二生家の木下家など玉名グループが北九州川運や海運を担う物流網の中心として栄え、その富によって文化形成ひいては俳壇形成を行っていたことを確認した。6月、山形から米沢にいたる陸運、川運の文化グループが形成されていたことを調査した。また、同月大阪歴史博物館、姫路文学館、堺都市政策研究所などを調査し、西は赤穂から南は泉州堺に至る大坂物流圏を基盤とした大坂俳壇の形成過程を確認した。12月には名古屋海洋博物館などを調査し、名古屋俳壇の基盤が名古屋港を中心とした川運、海運の物流網と関連していることを調査した。これらの現地調査での未調査部分は関係する東京の公共機関にて調査し裏付けを得た。これらの成果の多くは、単著論文「手紙の道。遙かなり。地方俳壇と物流網が織りなす書簡ネットワーク」(『文学・語学』223号、全国大学国語国文学会編 11月刊)で公開した。また、これらの成果とアジア海運との関連については11月に「The 5th International conference on Ocean」(韓国国立海洋博物館)において研究発表し、主催した学会「International Ocean and Culture Committee(IOCC) 」 の査読学術誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に続き、当初の計画通りに現地調査を中心に研究を行っているが、当初の予定にはなかった国内外からの学会発表や講演を依頼され時間がとられた。ただ、いずれも研究テーマに関連するものなので成果公表には役立った。また、学会での運営委員を多く引き受けているため、東京に行く頻度が増加した。そのため物理的に調査日数が減り、地方俳壇と物流網の現地での研究調査が遅れている。しかし、学会での地方大会参加時などを利用して次年度以降で計画していた調査地域と振り替えたために大きな支障は出ていない。さらに東京での会議時に延泊し、東京にある公的機関での文献調査を実施できているので、これも大きな研究計画の支障にはなっていない。結果、進捗状況は予定以上に進展しているが、データ化しホームページにupするのが技術的に不得意なので遅れ気味である。また、海外での講演では英語を求められるため、これも不得意なため、思いの外、渡航期間も含め、遅れる原因となってしまった。そのために、「おおむね順調である」と自己評価した。ただ、現地調査実施の後で残してしまった課題に気づくこともり、それらは追加調査する必要も生じてきているため、やはり概括すれば、おおむね順調に進展しているという報告にとどめざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
①次年度以降調査する予定であった地方俳壇の実地調査を早めたため、今年度までの調査項目として計画しながら残している地域の調査を優先する。具体的には以下である。 A.江戸時代前期の東海道地域における談林及び海運・河川物流網を中心とした俳諧文化圏の現地調査を行う。1.静岡・浜松、磐田、豊橋周辺の俳壇の現地調査。特に野口在色を中心としたグループと上方文壇との繋属関係を調査する。2.愛知・知多半島、渥美半島を中心とした俳壇の現地調査。特に下里知足を中心とした醸造業関係グループと上方文壇との繋属関係を調査する。B.江戸時代前期の太平洋側東北地域における談林及び海運・河川物流網を中心とした俳諧文化圏の現地調査を行う。1.宮城・仙台、特に大淀三千風を中心とした広範な芸術グループと上方文壇との繋属関係を調査する。2.宮城、塩釜、松嶋、仙北、登米を中心とした俳壇の現地調査。3.岩手・盛岡、石巻を中心とした俳壇の現地調査。 ②当該年度の計画を確実に実施する。 ③次年度以降の計画で実施可能な実地調査箇所があれば前倒しにして実施するなど臨機応変に現地調査を行う。東京など公的機関での文献調査は学会出張時等に要領よく行う。 ④遅れ気味のデータ入力にアルバイトなどを用い、効率を上げる。
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