2021 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of the Relationship Between the Kamigata Literary Circle and the Local Danrin Haikai Cultural Region: From the Perspective of the Maritime and River Distribution Network
Project/Area Number |
17K02480
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
森田 雅也 関西学院大学, 文学部, 教授 (10239668)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 17世紀日本文学 / 西鶴 / 談林俳諧 / 出版と読者 / 上方文壇 / 江戸時代の海川物流網 / 地方文化圏の形成 / 手紙 |
Outline of Annual Research Achievements |
近世前期、松永貞徳らによって和歌の伝統に基づく新しい短詩型文芸、俳諧文芸が登場した。この貞門俳諧と呼ばれる集団は和歌や王朝文学に精通した高度な教養を有していたため、俳諧を興じるためには、同等の文学教養を有することが条件となった。そのためには確固たる経済的基盤と文化的環境が必要となり、単に俳諧に興味を持つだけでは場の共有を得られないという制約があったと指摘した【1】。 その頃、印刷技術が向上し、仮名草子や王朝古典文学の注釈など多種多様な教養書が版本として売り出されるようになった。さらに、書物を安価で読める貸本屋制度も発展した。これにより万人がある程度の金銭さえあれば、身分に関係なく、読書という行為を通じて自学自習を行い、高い教養を身につけた文化人となったことを指摘した【2】。 特に地方における富裕層は製造業か海運・川運で富を得、全国物流網に関わる人物が多かった。彼らは大坂・江戸への廻米制度が定着するとともに、物流拠点に生活基盤を確立し、舟運によって大量消費地である「天下の台所」大坂を中心に上方を往来していたが、やがて上方文壇の人々も交流し、地元を拠点とした地方文化圏を形成し、その交信手段として物流網を利用していたと指摘した【3】。 時を同じくして、上方では貞門俳諧から独立した西山宗因や西鶴によって、言語遊戯性を重視しながらも即興性を謳う談林俳諧が流行し、手軽な旦那芸として俳諧を嗜む人々が増え、全国にたちまち広がった【4】。 この【1】【2】【3】【4】の現象を結び付け、上方文壇と地方談林俳諧文化圏との隷属関係について論文を執筆し、学会・講演等で発表したのが本研究である。研究期間中、現地調査などから地方物流網と関係が顕著な俳書と俳人をデータ化し、そのうち、最終年度に元禄期の蕉風確立前後のデータ、のべ4000件余りを科研用森田ホームページ内の日本地図で地域を可視化して公開した。
|
Remarks |
・森田雅也「西鶴と延宝期地方俳壇」(西鶴忌招待講演会 於大阪上本町西鶴菩提寺・誓願寺本堂 2021.9.19)
|