2020 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Satirical Culture and its Impact on Theater in the Late 1590s and the Early 1600s
Project/Area Number |
17K02490
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐野 隆弥 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90196296)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Thomas Dekker / The Roaring Girl / パルナッソス3部作 / 諷刺文化 / 世紀転換期 / パンデミック / ペスト |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度においては、エリザベス朝王朝交替期における宗教・政治関係の研究書、および諷刺文化と演劇興行に関する文献・資料を収集した。あわせてThomas Dekkerの喜劇とパルナッソス3部作とに関する論文の執筆を2件行うと共に、諷刺劇隆盛の時期とシンクロするペスト猖獗期における演劇のありように関する研究発表を行った。 研究発表については、近畿大学で開催された(Zoom開催)日本英文学会関西支部第15回大会で、シンポジウム英米文学部門「パンデミックの時代ーー共同体、統治、終末のヴィジョン」に登壇し、招待発表の形で「感染症と初期近代演劇」を発表した(2020年12月20日)。 論文については、「Thomas Dekker in 1611: *The Roaring Girl*における時代性と演劇的意識」を『文藝言語研究』第78巻(筑波大学大学院人文社会科学研究科文芸・言語専攻、2020年10月)、pp.1-12に掲載した。王朝交替期における諷刺劇制作を経由して戴冠エンターテインメントやパンフレット執筆に向かったDekkerが、5年間のブランクをはさんで制作した*The Roaring Girl*に注目し、直近の過去の市民劇を再利用することを通して、Dekkerが同時代性への回路を開いたことを明らかにした。 もう1件の論文は、日本シェイクスピア協会が協会創立60周年を記念して刊行する論集に採択された「シェイクスピアを諷刺するーーパルナッソス劇と世紀転換期の諷刺文化ーー」である(2021年10月刊行予定)。王朝交替期の諷刺劇を総括する位置に存在するパルナッソス3部作の演劇史的意義を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、エリザベス朝王朝交替期において顕著となった諷刺的文化環境が、演劇興行に及ぼした作用を実証的に検証することである。特に、令和2年度の目的は、パルナッソス3部作の分析を通して、諷刺文化と演劇のインターフェイスの最終局面を明らかにすることであった。この件に関し、全国誌レヴェルの論集に論文がアクセプトされた。よって、「おおむね順調に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的は、エリザベス朝王朝交替期において顕著となった諷刺的文化環境が、演劇興行に及ぼした作用を実証的に検証することである。令和2年度はCOVID-19のため研究環境に様々な制約を受け、課題に十分対応することが困難な状況に直面し、1年間の延長を余儀なくされたが、令和3年度はむしろそれを好機ととらえ、本研究課題の初年度で検証したJohn Marstonに再び向き合い、彼の後期諷刺劇を解明することで、次期プロジェクトとして予定している、17世紀初頭の悲劇(ジャコビアン・トラジディ)研究への架け橋を構築することを予定している。
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Causes of Carryover |
令和2年度におけるCOVID-19の猖獗のため、予定していたロンドンでの現地調査、国内における共同研究、各種学会・研究会主張がすべて中止となったため、旅費に大幅な残余額が生じた。 令和3年度では、研究計画を1年延長することにより生じた次年度使用額を活用しながら、「今後の研究の推進方策」に記述した研究課題を遂行する。各種資料・研究書の収集、それらの利用による研究論文の執筆および研究発表を計画している。
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