2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Satirical Culture and its Impact on Theater in the Late 1590s and the Early 1600s
Project/Area Number |
17K02490
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐野 隆弥 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90196296)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | パルナッソス3部作 / 大学劇 / 諷刺文化 / 世紀転換期 / シェイクスピア / ベン・ジョンソン / マーストン |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度においては、エリザベス朝王朝交替期における宗教・政治関係の研究書、および諷刺文化と演劇興行に関する文献・資料を収集した。あわせてパルナッソス3部作に関する論文を公刊すると共に、後継課題である諷刺文化とジェイムズ朝悲劇との関係性解明のプロジェクトに着手した。また、諷刺劇隆盛の時期とシンクロするペスト猖獗期における演劇のありように関する発表を行った。 研究論文については、「シェイクスピアを諷刺するーパルナッソス劇と世紀転換期の諷刺文化」を『シェイクスピアとの往還ー日本シェイクスピア協会創立六〇周年記念論集』(日本シェイクスピア協会編、研究社、2021年10月)に掲載した。世紀転換期にケンブリッジ大学で上演された大学劇である「パルナッソス3部作」が、同時代のロンドンの演劇界と諷刺文化とを色濃く反映している様を実証的に記述し、「パルナッソス3部作」の演劇史的意義を明らかにした。 発表については、筑波大学で開催された(Zoom ウェビナー開催)公開講座「Literature in Science Cityー文学と医学」において、前年度において行った研究発表をさらに加筆拡充した「シェイクスピアとパンデミック」を発表し、シェイクスピア時代における演劇がなぜ舞台上で疫病を表象できなかったのか、という問いに対する解答を、小説や映画といった他のメディアと比較することで解明を試みた(2022年2月19日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、エリザベス朝王朝交替期において顕著となった諷刺的文化環境が、演劇興行に及ぼした作用を実証的に検証することである。特に、令和3年度の目的は、パルナッソス3部作の分析を通して、諷刺文化と演劇の相互作用の最終局面を解明することであった。この件に関し、全国誌水準の論集に論文を掲載することができた。よって、「おおむね順調に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的は、エリザベス朝王朝交替期において顕著となった諷刺的文化環境が、演劇興行に及ぼした作用を実証的に検証することである。「パルナッソス3部作」に関する水準の高い論文を刊行したことで、所期の目的は達成されたが、COVID-19による研究活動の制約のための研究期間の延長をむしろ好機ととらえ、令和4年度は、次期プロジェクトとして予定している、諷刺文化とジェイムズ朝悲劇との関係性解明につながる研究活動を予定している。
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Causes of Carryover |
令和3年度においても、COVID-19の猖獗のため、予定していたロンドンでの現地調査、国内における共同研究、オンサイトでの各種学会・研究会等がすべて中止となったため、旅費にかなりの残余額が生じた。 令和4年度では、研究計画を1年延長することにより生じた次年度使用額を活用しながら、「今後の研究の推進方策」に記述した研究課題を遂行する。各種資料・研究書の収集、それらの利用による研究論文の執筆および研究発表を計画している。
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