2019 Fiscal Year Annual Research Report
Literary Elements in Natural History: the Relationship between Empirical Facts and Literature
Project/Area Number |
17K02494
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
日臺 晴子 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (40323852)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 想像力 / 博物学 / 科学 / 物質 / 生命 / ゴシック小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、Charles Kingsleyがチェスターにおいて創設したChester Society of Natural Science, Literature and Artでの活動において、自然を対象とした学問が博物学と近代科学とに分岐してゆく時代の流れの中で、彼自身が科学と想像力の関係性をどのように考え、それを如何に創作活動や社会活動へと昇華させていたかを捉えようとした。イギリスでの調査では、大英図書館とチェスター聖堂附属図書館にて資料を収集した。特に後者の図書館において、Chester Society創成期の議事録を入手し、Kingsleyの生誕200年を記念したイベントを統括した歴史学者のGeorge J. Brooke氏にチェスター時代のKingsleyについてインタビューを行った。これらの収集資料を参考にしながら、Kingsleyの科学に関する講演集やエッセイ集を読み、高度化してゆく科学に対して、彼自身は博物学との連携や歴史化や文化の取り込み等の必要性を感じていたことが明らかになった。 当初予定していたKingsleyの博物学的著作における文学的要素の意義の研究とは異なるが、17世紀から19世紀までの科学の歴史の流れを追う中で、人間と物質との関係および人間が物質に向ける想像力という問題に行き着いた。人間と物質を関係づける想像力が、生命とは何かという根源的な問いに対する科学的探究と関わっていることから、生気論や物活論が文学作品にどのように影響を与えているのかを考察することとした。その際、物質の存在感を顕在化させるゴシック小説に焦点を絞り、作品が書かれた時代の科学的知見に影響された物質に対する想像力が、人間と物質との境界または境界の曖昧さを描出することに寄与していることを明らかにした。
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