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2019 Fiscal Year Research-status Report

19世紀英米作家のホームの感覚と太平洋表象についての研究

Research Project

Project/Area Number 17K02496
Research InstitutionKanazawa University

Principal Investigator

山本 卓  金沢大学, 学校教育系, 教授 (10293325)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2021-03-31
Keywords太平洋表象 / 英語圏文学 / R. L. スティーヴンスン / サマセット・モーム / ルイス・ベック
Outline of Annual Research Achievements

本年の研究においては、ここまで通時的に検証してきた太平洋作品をルイス・ベックを中心に再検証した。R. L. スティーヴンスン、ベアトリス・グリムショウ、ジョゼフ・コンラッド、サマセット・モームに比べると、ルイス・ベックは特異な「太平洋体験」を持つ。前者がいずれもヨーロッパから太平洋世界に赴いた異邦人であり、その傍らに常に「ホームの感覚」を持ち続けていた一方で、オーストラリア人であるベックにとっては太平洋こそが故郷となる。ベックの商船経験はコンラッドと共通するものの、密貿易や海賊行為への従事という点で彼とは大きく異なるし、他のヨーロッパ出身の作家たちにとって海洋貿易は完全な異世界である。これまでのベックに関する研究は、彼の創作活動の当初の成功とその後の急速な失速を、こうした特異な経歴の産物として考えてきた。すなわち、太平洋の裏の世界まで知りつくした作家という話題性が、彼の作品の評価に大きく貢献したとみなされてきたのである。今年度の本研究の成果の一つは、こうした伝記的な解釈に作品表象の比較検証を加えることで、作風の点からベックを太平洋を扱ったヨーロッパ作家の系譜の一部に位置づけたことにある。これまでの本研究の検証結果と対照し、彼が選ぶテーマとグロテスクな描写が、前世紀の太平洋の探検家が残した記録の特徴により近いことを同定した。ベックは、同時代の作家たちが時代遅れと見なした太平洋の古いイメージを掘り起こし、19世紀末の読者に再提示したのである。また、彼の成功に編集者の力量が大きくかかわっていたことも合わせて確認した。これらの研究結果は令和元年の日本コンラッド協会の大会において英語で発表した。初年度に検証した宣教師たちの太平洋言説と、その後の作家による言説との間で生じる「ホームの感覚」の相同と差異については、研究期間を一年延長し考察する。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本研究の総括として太平洋物語を残した作家と太平洋での宣教活動についての関係をさらに検証するために、サウスウェールズ州立図書館での資料収集を計画していたが、コロナウイルスの影響で渡航が叶わなくなり、研究に遅れが生じた。

Strategy for Future Research Activity

研究の方針は従来と同様であり、これまでの個別の研究成果を、あらためて「ホームの感覚」を軸として再検証し論考を執筆する。

Causes of Carryover

コロナウイルスの影響で資料集のための海外出張を中止したことで、旅費が全く使用できなかった。物品費については、当初の想定よりも購入金額が低かった。今年度は海外渡航が可能になり次第、速やかに実現する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2019

All Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Presentation] The Pacific Imagination and the Narrative of Romance: Louis Becke, Joseph Conrad, and Robert Louis Stevenson2019

    • Author(s)
      Taku Yamamoto
    • Organizer
      第4回日本コンラッド協会大会
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2021-01-27  

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