2020 Fiscal Year Annual Research Report
Social Psychological Study of the Influence of the Postal Reform on Crime in Victorian Literature
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17K02497
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松岡 光治 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70181708)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 郵政改革 / 1ペニー郵便制 / ヴィクトリア朝 / 社会心理学 / 悪の解剖 / ディケンズ / Bleak House / 書く行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
補助事業期間の最終年度である2020年は、1870年に死去したディケンズの没後150年にあたるので、前年度からディケンズの20作品それぞれに適した論文執筆者をディケンズ・フェロウシップ日本支部の会員から選び、「悪の解剖」という共通テーマで英語論文を執筆してもらった。この英語論文集の編者として単独で編集作業を行うと同時に、序論ではディケンズ文学における善悪の二項対立からその混交への変遷をたどりながら悪のテーマと作者の社会観・人間観の深化との関係を考察し、第13章(章題は ""I Can't Help Writing It": Maladies of the Penny Post in _Bleak House_")では本研究課題に沿った形のアプローチで、1840 年の「1ペニー郵便制」の弊害として生じた犯罪行為、特に世界初の郵便切手と郵便ポストの導入によって一気に高まった投函者の匿名性を悪用した犯罪行為の観点から、作中人物たちの行動の普遍性と特殊性を社会心理学的に分析した。公私にわたって大量に手紙を書いたディケンズは、1850年代前半に自分が編集した雑誌 _Household Words_ において新しい郵便制度に関する記事をいくつか寄稿しているが、そこに見られる郵便制度への彼の両価感情は、『荒涼館』においても通信革命で激増した情報処理のストレスに伴う強迫観念としての「書く」行為に見出すことができる。このディケンズの強迫観念を通して判明したのは、小説や手紙で他者について書くことによって意識的に抑圧している自己の感情を無意識的に描出しているというパラドックスである。最終的には、この英語論文集を _Dickens and the Anatomy of Evil: Sesquicentennial Essays_ という書名で Athena Press から12月25日に上梓した。
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Remarks |
This volume, compiled to commemorate the 150th anniversary of Dickens's death, explores the themes of evil explicitly and implicitly found within all his major and many of his minor works.
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