2017 Fiscal Year Research-status Report
ロマン派期英文学における叙事詩の様態-スコットとホッグの詩作品を通して
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17K02498
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
吉野 由起 三重大学, 人文学部, 准教授 (90707291)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 英文学 / 叙事詩 / ロマン主義 / ジャンル実験 / ウォルター・スコット / ジェイムズ・ホッグ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題プロジェクト1年目にあたる平成29年度は、イギリス・ロマン派期に「叙事詩」がおかれた文学史上の文脈および最新の研究動向と知見を把握する為の予備調査を行う期間と位置付け、(i)イギリス・ロマン派の文学および芸術(ii)イギリス・ロマン派期文学における「ジャンル」と「叙事詩」、に関する文献リストの作成と資料収集を開始した。並行してDavid Duff(2009)、Herbert Tucker(2008)、Simon Dentith (2006)による先行研究の精査に着手し、ロマン派期におけるジャンル意識・ジャンル実験、「叙事詩」の定義と19世紀イギリス文学における展開と特性に関する主要論点の検討を開始した。この過程で、結果としてEdmund Spenserを中心とする、ロマン派以前の時代における叙事詩とジャンル意識の検証に時間を割くことが不可避となった。 Hoggが自らの叙事詩作品を創作する際に強く意識していたと考えられるSpenserのThe Shepards Calendar(1579)とThe Faerie Queene(1590, 1596)、両作品のパラテクスト作品群の読解分析を進めたところ、特に前者The Shepards CalendarとHogg自身のThe Shepards Calendar(1829)の間に予想以上に深い関連性があるという仮説に到達している。 特に冒頭のSpenserの筆による書簡には同時代イングランドにおける文芸や英語という言語に関する興味深い省察が綴られ、aeglogue(牧歌)に関してはヴェルギリウスやペトラルカ等、ローマ、イタリアの大詩人の創作活動を飾った重要なジャンルであるという議論が展開されており、Hogg自身の文学観、言語観、創作上の美学に共鳴する部分がある可能性があると考えられるため、慎重に観察を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を進めた結果、ロマン派以前の時代における叙事詩とジャンル意識の検証が不可避となり、特にEdmund Spenserの作品の読解検証が必要になっているが、本来の専門分野ではないため相当の時間と労力を要している。このため論文執筆は遅れているが、研究課題の全般的な進捗としてはおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度も引き続きSpenserによる二作品 (The Shepards CalendarおよびThe Faerie Queene)の読解分析と、Duff, Tucker, Dentithによる先行研究の検証を中心に、ロマン派期におけるジャンル意識・ジャンル実験、「叙事詩」というジャンル像を理解する上での補助線となる予備作業を継続する。 また、Spenserに関しては、Hogg自身による同タイトルの二作品との比較検証を進め、成果を論文にまとめる作業を開始する。
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Causes of Carryover |
平成29年度はSpenserの作品読解に当初の予想を大幅に上回る時間と労力を要し、夏期には勤務校の語学研修引率のため海外出張も行ったため、国内の大学図書館における資料収集作業を次年度に先送りした。平成30年度に、資料収集を目的とする国内出張費用として使用する計画である。
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