2019 Fiscal Year Research-status Report
ロマン派期英文学における叙事詩の様態-スコットとホッグの詩作品を通して
Project/Area Number |
17K02498
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
吉野 由起 三重大学, 人文学部, 准教授 (90707291)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 英文学史 / 叙事詩 / ロマン派 / ジャンル実験 / James Hogg / Walter Scott / フォーク・リヴァイヴァル / 妖精譚 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間3年目にあたる2019年度の直接的な成果としては、前年度までに進めたEdmund Spenserによる二作品 (The Shepards Calendar および The Faerie Queene)の読解分析、David Duff, Herbert Tucker, Simon Dentith による叙事詩の先行研究の検証、本研究課題の主な対象であるJames Hogg の叙事詩 The Queen’s Wake の読解分析の結果を単著論文一篇にまとめた。2019年度末までに入稿および校正、使用する図版に関する所蔵館での手続き等を完了し、2020年5月に刊行される木村正俊編『スコットランド文学の深層-場所・言語・想像力』(春風社)の第六章として収録される予定である(論文タイトル:「叙事詩の創造-ジェイムズ・ホッグ『女王の夜曲』と「羊飼いの暦」」、掲載頁117-138頁) 9月には海外(英国)における文献資料調査を行ったが、本年も所属大学における海外語学研修の責任者として海外研修引率業務を担当したため、やむをえず調査を実施する図書館を変更し、オックスフォード大学附属ボドリアン図書館一か所に集約して調査を行った。 本研究課題の成果を間接的に還元した派生的な成果は、以下のとおりである。10月には日本英文学会中部支部大会にて、「英文学と脇役」をテーマとするシンポジウムの企画を担当し、「Walter Scott,Ivanhoe-歴史小説と脇役」という内容を扱う研究発表を行った。また2020年3月に刊行された高橋和久・丹治愛編『二〇世紀「英国」小説の展開』に収録された論文一篇では、Angela Carterによる小説Nights at the Circusを、英文学史の底流をなす、ブリテン諸島に展開した妖精言説の再話として読解する試みを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の直接的な研究成果を論文にまとめ、分野の第一人者による専門書(論文集)に収録されるという成果に結実させることができた。また派生的な成果も、英文学史を扱う専門書に収録された論文1篇、学会における研究発表1篇にまとめることができた為。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度にあたる本年度は過去3年間にわたり進めた文献調査の結果を論文にまとめる論文執筆期間として重点を置く期間である。ただし過年度の海外(英国)における資料調査のうち、スコットランド国立図書館およびエディンバラ大学附属図書館での調査を完了できていない為、2020年度に調査を行うことを目標に含める。 具体的な作業内容としては、スコットとホッグによる、個別の作品にみられる叙事詩性というケース・スタディにもとづき、イギリス・ロマン派期文学・芸術運動におけるジャンル意識や叙事詩という形式・修辞法の位置を再考する。その際に、可能な限り、同時代ワーズワス、ヴィクトリア朝期オーロラ・リーらによる「叙事詩」との連動性も視野に入れ、論文にまとめ、査読付き学術誌への投稿を目指す。
|
Causes of Carryover |
今年度海外(英国)における資料調査を実施する図書館に、当初の計画ではスコットランド国立図書館およびエディンバラ大学附属図書館など複数の図書館を含めていたが、勤務校の海外研修引率業務のため、オックスフォード大学附属ボドリアン図書館一館で集約して調査を実施せざるをえなくなった。また過去2年間での文献収集が予定以上に進展していたため、今年度はこれらの資料の分析作業に時間が掛かった為。スコットランド国立図書館およびエディンバラ大学附属図書館における調査は本研究課題の推敲上不可欠であるため、次年度の実行を目標とする。
|