2020 Fiscal Year Research-status Report
初期近代英国演劇におけるキルケ神話の表象に関する考察
Project/Area Number |
17K02499
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
廣田 篤彦 京都大学, 文学研究科, 教授 (40292718)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 古代神話 / キルケ / 初期近代英国演劇 / シェイクスピア / 書換え |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、国内外の図書館における資料調査や収集、また、意見交換や研究成果発表に大きな制約が課されたため、当初の予定を変更し、主として既に収集した資料の整理を中心に研究を実施することとなった。こうした収集済み資料や国内で入手可能な資料(オンラインにて閲覧可能なものを含む)を活用しながら、具体的には以下の三点からキルケ神話の諸相を検討した。 1)John Fletcher作_The Island Queen_と、その次年度に上演され、本作を強く意識し(またはこれに対抗して)書かれたとされるPhilip Massinger作_The Renegado_を比較対照。両者が書かれた1620年代の文脈を考慮しながら、これら二作品におけるキルケ神話の書き直しを検討した。 2)これら二作品と比較しうるShakespeareの劇作品との比較対照。初期近代英国演劇におけるキルケ神話の導入に最も影響力のあったオウィディウスの『変身物語』の再検討をあわせて実施した。その過程で得られた知見を用いながら、「京都大学春秋講義」において「シェイクスピアと古典/古典としてのシェイクスピア」と題する公開講義を行い、オンライン配信した。本講義では『変身物語』を様々に活用している_Titus Andronicus_に焦点を当て、このテクストの書換えを主要テーマの一つとした。 3)キルケ神話ならびに関連する古典古代神話の初期近代から現代にいたる文学作品における書換えの諸相の探求。地中海世界、特に古代ローマににおける神話の在り方と背景となる歴史、また、初期近代におけるヨーロッパ人による新大陸「発見」と征服の諸相について今後の研究の基盤となる調査を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
海外渡航が事実上不可能になり、さらに出席を計画していた国際学会が中止なるなど、新型コロナウイルス感染症の影響により、国外における資料調査、研究発表が実施できなかった。また、国内においても移動に制約が課される中で、資料調査や意見交換の機会が失われた。これらの理由により研究期間を一年間延長することとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は本研究の最終年度として、以下二点に焦点を当てて研究を推進すると共に、過去3年間に実施してきた研究の総括を試みる。 1)2020年度に実施途中であった_The Island Princess_と_The Renegado_におけるキルケ神話の書き直しの比較検討。ここでは過去の研究において常に比較対象となって来たシェイクスピア作品との関係に留意する。この際特に_The Merchant of Venice_、_The Merry Wives of Windsor_に着目する。 2)2020年度に開始した、より広い文脈におけるキルケ神話の発展の探求。古代から初期近代、更にはそれ以降まで、また英文学に限ることなく西欧文学や歴史研究の成果をできる限り調査し、古典古代神話の書き直しという主題の研究を一層発展させる方向を探る。 上記二点は、本研究期間を通じて共同研究を行っているフランスPaul Valery大学ICRLとの更なる関係との基礎となるものであり、実際に渡仏しての意見交換、成果発表を2022年度に計画している(当初2021年度に予定されていたものが渡航制限等により延期、再申請中)。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、国内外における資料調査、意見交換、学会における成果発表の成果が多く失われたため、特に旅費の使用ができなかったことが主たる原因となっている。2021年度も特に国外への渡航には大きな制約が課されると考えられることから、当初はこの目的に使用する計画であった研究費は、主として国内において入手可能な資料、また資料整理に必要な機器、更には必要に応じて資料整理の補助を依頼するための人件費として使用する計画となっている。
|
Research Products
(1 results)