• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2018 Fiscal Year Research-status Report

イギリス・ロマン主義文学における「身体性」のレトリックと革新性

Research Project

Project/Area Number 17K02502
Research InstitutionFukuoka University of Education

Principal Investigator

後藤 美映  福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20243850)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
Keywordsイギリス・ロマン主義文学 / 医科学 / 身体性 / ジョン・キーツ / 趣味論
Outline of Annual Research Achievements

今年度は、前年度の研究成果として明らかにした、当時の医科学的発達とその知識に基づく新しい身体観が、ロマン派の詩作にどのように表象されているかを具体的に考察し、ロマン主義文学の「身体性」のレトリックと革新性について明らかにした。
まず、19世紀初頭のロマン派の創造性を考察する場合、18世紀の美学的趣味論から説き起こされた想像力の定義を対照的に捉えることによって、その革新性は明らかとなることを論点とした。18世紀の趣味論にみる創造性の核は、「霊的昇華」、「自己の客観化」といった形而上学的語句に象徴される、非身体性に求められたといえる。しかしその後、19世紀初頭におけるロマン派の詩の変革は、当時の医科学の発達とともに台頭する身体観の変革と軌を一にするものであり、詩に表現される人間性の表象の背後には、身体のイメージが基盤として存在した。したがって、具体的には、18世紀の趣味論から19世紀初頭のロマン派の詩作までにおいて鍵語となるtasteを、非身体的創造性を担う「趣味」と、直截な身体性を保持する「味覚」との両義性を備えた語として捉え、身体と詩の創造性についての考察を行った。
具体的にはまず、ジェゼフ・アディソン、デイヴィッド・ヒューム、シャフツベリー、ジョシュア・レノルズら18世紀を代表する文人による趣味論の言説を通して、いわゆる「礼儀正しい」、節度ある自己という非身体性に基づく美学の体系を捉えた。そして、次にジョン・キーツの詩作を中心に、18世紀の趣味論とは対照的な味覚と消化をめぐるイメージを考察し、身体と詩の創造との密接な関係を明らかにした。このことによって、節度を旨とした趣味には収まらない、キーツの詩作における感覚的、個別的な身体的経験を基盤とした創作性こそが、詩的改革の契機を孕んでいることを論証した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

今年度は、研究計画に従い、平成29年度に収集した研究文献・資料の不足を補う資料収集を行い、論文作成、学会発表として成果をあげた。研究資料としては、大英図書館において、18世紀から19世紀初頭の医科学関連の第一次資料を中心に調査・収集を行い、アストリー・クーパー、ジョン・ハンター、ジョン・セルウォールらの医科学的著作を精読した。成果物としての論文は前年度より執筆中であった英語論文を完成し、英国のイギリス・ロマン主義研究を牽引する学会誌として、世界的に有名なRomanticismに投稿し、目下審査中である。また、今年度は、日本英文学会九州支部大会において、「詩と革新」と題したシンポジウムを企画し、18世紀の趣味論の言説とロマン派の詩の詩的イメージとの相違から、身体性と詩の創造との密接な関係を明らかにする発表を行った。
こうした成果によって、今年度は研究計画・目標として上げていた「身体性」という要素によって、ロマン主義文学の詩の改革がいかに自由主義的思想を根幹に据えていたかを発展的に明らかにすることができた。

Strategy for Future Research Activity

最終年度である2019年度は、2018年度にシンポジウムにおいて発表した研究を論文として国内の学会誌に投稿し発表する予定にしている。さらに、8月に開催される九州・山口イギリスロマン派研究会において、これまでの研究成果をまとめた内容を口頭発表する予定であり、研究会での質疑応答や討論において得られた内容を発展させ、研究課題のまとめとして国内外の学会誌において刊行する予定にしている。

Causes of Carryover

次年度使用額として生じた327円については、翌年度分と合わせて、研究に必要な関連図書の購入に使用する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2018

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 身体の詩学と革新性―ジョン・キーツの詩における詩的昇華/消化の美学2018

    • Author(s)
      後藤 美映
    • Organizer
      日本英文学会九州支部第71回大会シンポジウム「詩と革新」

URL: 

Published: 2019-12-27  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi