2018 Fiscal Year Research-status Report
ヴィクトリア朝の「堕ちた女」の研究:その実態と文学表象について
Project/Area Number |
17K02503
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
西村 美保 名古屋学院大学, 外国語学部, 教授 (60284452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱 奈々恵 福岡大学, 共通教育研究センター, 講師 (10711278)
松倉 真理子 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (90390145)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヴィクトリア朝文学 / ヴィクトリア朝文化 / マイノリティ / ジェンダー / セクシュアリティ / モラル・スタンダード |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究実績の概要は以下のとおりである。研究代表者西村は「堕ちた女」の収容施設に関する資料収集を行う一方で、ヴィクトリア時代の人々の性に対する態度の起源と変遷について情報把握に努めた。西村はヴィクトリア朝の女性労働者のイメージ、すなわち「善良な女」という理想像とその対極にある「堕ちた女」という二項対立を意識して、また、分担者(松倉)は社会福祉の観点から、同じく分担者(濱)はイギリスからの移民に関心を寄せてエリザベス・ギャスケルの小説を中心に分析と考察を深めた。 8月下旬から9月上旬にかけて本テーマに関連する資料収集のための海外出張を途中まで2グループに分かれて行った。西村はフィンランド国立図書館にてヴィクトリア朝の「堕ちた女」に関する資料として当時の女性労働者に関する研究書を吟味し、その後連合王国ではノッティンガム近郊の救貧院のミュージアム"The Workhouse"を訪問して、当時の貧民の隔離状況と救貧院の実態把握に努めた。当時の小説で「堕ちた女」となった者が最後にたどり着く場所として描かれる救貧院に出向き、実態を把握できたことは大変意義深かった。レスター大学では特に「堕ちた女」たちの移住に関する文献を吟味した。分担者(松倉・濱)と上記大学で落ち合い、ジョアンナ・シャトック教授と研究について議論した。松倉と濱もFoundling Museum(元捨て子養育院やRiponにあるWorkhouse Museum(救貧院)、世界最古の救貧院Hospital of St. Crossなどを訪問した。オーストリアのウィーンの美術史美術館では「堕ちた女」あるいは性的誘惑に関する絵画的イメージについて吟味した。 帰国後は各自が出張で得た情報を参考にしながら、ギャスケルの作品を中心にヴィクトリア朝小説を分析して論文の執筆などを行い、現在に至っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文執筆という点では当初予定よりも進んでいるが、他の面では計画通りに進まないこともあることから、「おおむね順調に進展している」ことと判断した。計画では論文執筆を平成32年ということにしていたが、西村は平成29年度に発表をする機会に恵まれたので、平成30年度に論文執筆を行った。予期せぬ方向から発表の機会を与えられたのだが、それによって、また日程的な都合もあり、計画段階で考えていた学会発表を変更せざるを得なくなった。しかしながら、予定していた平成30年度の海外出張も意義あるものとすることができ、それを踏まえて帰国後各自がそれぞれのペースで研究を着実に進めており、さらなる論文執筆が見込める状態である。西村は勤務校の大学院生の指導と院生との共同研究も2件あり非常に多忙であった。しかしながら、院生との共同研究では学ぶことも多く、うち1件は本研究に寄与するところが多いので、大いに刺激を受けながら、論文執筆への道を歩んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
西村は研究を遂行するために、あえて学部や大学院の英米文学系の授業で本研究テーマに関連する作品をテキストに選んだり、取り上げている。授業準備の段階が研究の一部となるからである。院生との共同研究でも、そうした作品を吟味することで、より多角的に分析することが可能になるようしている。一方、研究会の開催や情報提供、また研究成果が出た際、論文や本を送り合うことで分担者と情報共有をしていきたいと考えている。共同執筆についても興味があれば申し出るよう呼び掛けている。
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