2020 Fiscal Year Research-status Report
英米モダニズム文学における環太平洋ナショナリズム表象の思想史的研究
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17K02505
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
新井 英永 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (00212598)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナショナリズム / ジャック・ロンドン / ハワイ / ハンセン病 / 帝国主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
環太平洋地域において幅広く活動しそれを反映させた多くの著作を残しているジャック・ロンドン(Jack London 1876-1916)は、環太平洋ナショナリズム表象分析のために極めて重要な作家である。『野生の呼び声』(1903)や『白い牙』(1906)など北米の雪に覆われたアラスカやカナダ・ユーコン川流域におけるゴールドラッシュ時代を背景にした作品が有名であるが、その一方で、日本やハワイ、タヒチ、あるいはロンドンの貧民街等を放浪あるいは取材しており、世界的な旅行作家としての知名度も高くなってきている。 多岐にわたるジャック・ロンドンの作品群のうち、本年度は、そのハワイ表象に焦点を絞り検討した。具体的には、ハワイを舞台としてハンセン病問題を扱った三つの短編小説(「さよなら、ジャック」[1909]、「コナの保安官」[1909] 「ハンセン病患者クーラウ」[1909] のハンセン病三部作)を中心に分析を進めた。 同時に、ハワイの歴史や社会・文化、ハンセン病に関する研究も行なった。参照した図書は、ハワイ関連では猿谷要『ハワイ王朝最後の女王』(2003年)、矢口祐人『ハワイ王国 : カメハメハからクヒオまで』(2011年)、目黒志帆美『フラのハワイ王国史』(2020年)等、ハンセン病関連ではトニー・グールド『世界のハンセン病現代史: 私を閉じ込めないで』(2005;2009年)や犀川一夫・森修一・石井則久『世界ハンセン病疫病史:ヨーロッパを中心として』等である。 次年度は、ハンセン病問題とアメリカ・ヨーロッパのナショナリズムや帝国主義の関係を踏まえ、ジャック・ロンドンの上記短編小説に関する論文を執筆する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ハワイの歴史・社会・文化やハンセン病に関して調査しながら、ジャック・ロンドンのハワイを舞台とする「ハンセン病三部作」を精読できたことは収穫であった。しかし、アメリカ・ヨーロッパのナショナリズムや帝国主義とハンセン病の関係を精査したうえでの踏み込んだ作品分析には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ジャック・ロンドンの手紙や伝記を、太平洋を航海した時期を中心に吟味すると同時に、分析の対象をハワイを舞台とする「ハンセン病三部作」から、南太平洋を舞台とする作品に広げることにより、ジャック・ロンドンの環太平洋地域表象の特徴を解明したい。
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Causes of Carryover |
ジャック・ロンドンの手紙や伝記を、太平洋を航海した時期を中心に吟味すると同時に、分析の対象をハワイを舞台とする「ハンセン病三部作」から、南太平洋を舞台とする作品に広げることにより、ジャック・ロンドンの環太平洋地域表象の特徴を解明したい。
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