2022 Fiscal Year Annual Research Report
A Historical and Theoretical Study of Representations of Pan-Pacific Nationalisms in Modern British and American Literature
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17K02505
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
新井 英永 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (00212598)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジャック・ロンドン / ハワイ / モロカイ島 / ハンセン病 / メニッポス的諷刺 / ミハエル・バフチン / ノースロップ・フライ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、アメリカ帝国主義とハンセン病問題の文脈で、ジャック・ロンドンの短編小説「さよなら、ジャック」(1909) に関する考察を深め論文にまとめた。「さよなら、ジャック」は短いテクストながら、縦横に張り巡らされた伏線などが示すように、作者ジャック・ロンドンの技巧が発揮された短編である。文学ジャンル的にも「メニッポス的諷刺(メニピアン・サタイア)」の要素が多分に盛り込まれているため、この短編についての別の論考(「メニッポス的諷刺としてのジャック・ロンドン『さよなら、ジャック』」を執筆した。「さよなら、ジャック」は、これまで一人称の語り手によるプロットの展開といった形式面が注目されることはあっても、ジャンル論の観点からの読解に至っては、ほとんど手つかずというのが現状である。そこで、本論文は、ミハエル・バフチンやノースロップ・フライ等のジャンル論を援用し、「さよなら、ジャック」が「メニッポス的諷刺」のジャンルに属することを論じ、この短編においてその諷刺がどのようになされているかを明らかにしようと試みた。 一方、これまで研究蓄積のあるD・H・ロレンスを比較のための座標軸として設定し続けることが必要であると判断し、D. H. Lawrence Review (USA) の依頼を受け、John Turner, D. H. Lawrence and Psychoanalysis (Routledge, 2020) の書評を執筆した。次年度のD. H. Lawrence Review 第45号に掲載予定である。
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