2018 Fiscal Year Research-status Report
The Study on the Relationship between Theme of Morality and the formation of the identity of a Nation in the Seventeenth and the Eighteenth century English Literature
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17K02506
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
園井 千音 大分大学, 理工学部, 教授 (70295286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 耕一 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (20274558)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 英文学 / 国民意識 / ミルトン / ロマン派 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度においては1640年代~1650年代のイギリス国民意識における自由思想、寛容主義、懐疑思想が形成された基盤また1650年代の共和主義思想の道徳的意義をジョン・ミルトン文学を中心に検証した。また王政復古(1660年)~18世紀までのミルトン文学の受容史を分析し、政治的文献批評の閉脚と『失楽園』(Paradise Lost)(1667年)を中心とする文学作品批評との不調和を宗教的政治的コンテクストにおいて分析した。またミルトン文学における自由思想の系譜とロマン派詩人との思想的関連を中心に分析した。また社会的変革における人間の理性、知性、自由意思、自己発見等の問題と文学における道徳的主題と国民意識形成の思想的関連をロック、ホッブズ等を中心に分析した。また17世紀の自然科学思想(ニュートン、ロバート・ボイル等)発展と政治的経済的コンテクストとの関連を分析した。これらの文学、哲学、科学思想の分析結果を総合検証し、イギリス文学における道徳的主題とイギリス国民意識形成との関連の一部を検証した。 これらの研究を遂行するためにイギリス(大英図書館、オックスフォード大学図書館、バーミンガム大学図書館など)及び国内(東京大学附属図書館、九州大学附属図書館、北海道大学附属図書館など)における文学的思想的資料分析、また研究会開催とセミナーへの出席(バーミンガム大学)などを行った。この間、研究分担者(平田耕一九州工業大学教授)や研究協力者園井ゆり広島大学准教授、杉本美穂福岡女学院大学非常勤講師、ティム・フルフォード教授(ド・モンフォール大学)、サラ・ナイト教授(レスター大学)、ヒュー・アドリントン博士(バーミンガム大学))との研究打ち合わせを入念に行った。 この結果、ミルトン文学に代表される自由思想と寛容主義は17世紀以降のイギリス国民意識におけ思想的基盤を形成していることが明確になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は関連分野における2回の研究会主催と1回のイギリスにおける学会発表などを含み、おおむね計画通りに進んでいる。 現在は2018年度の研究結果を踏まえミルトンの政治的散文における道徳的主題の普遍的要素について同時代の文学(アンドルー・マーヴェルなど)、また王政復古後の17世紀~18世紀文学(ポープ、ブレイクなど)におけるミルトン文学の17世紀以降における影響とイギリス国民意識形成との関連を中心に分析している。1650年代から18世紀前半におけるミルトンの共和主義思想の影響とクロムウェルとコモンウェルス思想の社会的政治的受容と反発の過程を分析し、宗教改革の継続的深化、王政復古後の社会的政治的揺り戻しなどの関係についてイギリス文学の道徳的主題の国民意識形成過程への影響とその特質を検証している。 また前年度の研究結果を踏まえ、社会的変革における人間の理性、知性、自由意思、自己発見等の問題と文学における道徳的主題の思想的関連をフランシスコ・ベーコン等を中心とする道徳的主張、ロック、デカルト、ホッブズ等を中心とする合理主義的思想の相克の関係において検証する。加えて宗教的思想とイギリス国民意識の関連の本質を、宗教的懐疑懐思想の関係、宗教的思想派間の相克と宗教的寛容主義の関係(国教会派(アングリカニズム)、ピューリタニズム、プロテスタンティズム、カトリシズム等)、自然科学思想発展(ニュートン等)と神学的思想の相克、イギリス共和主義思想性質を中心にイギリス国民意識に一貫する道徳性と自由思想の特質を宗教的思想的資料の分析において明らかにする。 上記課題についてイギリス及び国内での関連資料収集分析を計画している。また研究分担者及び研究協力者との打ち合わせを行い本年度中の研究会開催に向け準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究最終年度にあたるのでこれまでの研究総括を行う。 17世紀における文学における道徳的主題と国民意識形成との関連において、人間の自由思想と自己発見哲学、懐疑的精神、宗教的寛容の精神はイギリス国民の特質と道徳性を形成する基盤的要素として示され、この性質がさらに18世紀初頭から半ばにおけるイギリス文学においては、人間の基本的感情などへの関心や調和的哲学思想、また博愛的精神等を主張する道徳的主題として発現し、それがイギリス国民意識形成と総合的に関連し、1770年代から1790年代におけるイギリスロマン主義思想の根幹的要素となる。本年度は前年度までの研究結果を踏まえ、ミルトン文学とロマン派文学との自由思想の関連に見るイギリス国民意識の系譜を1770年代から1790年代にかけてのロマン主義文学(ブレイク、ワーズワース、コールリッジ、サウジーなど)を中心に分析する。社会改革的気運と人間の基本的人権確立などの理想主義の思想的関係、また非国教的要素と懐疑的精神との関連、などの視座においてイギリス文学の文学的主題と国民意識形成の関連とその道徳的性質の検証を社会的歴史的思想的資料分析において行い、人間の自由思想、自己探求、懐疑的精神、寛容的思想、道徳的一貫性への強い回帰性が1640年代以降のイギリス文学の道徳的主題とイギリス国民意識の基盤にコンスタントに存在し、それがより明確に1770年代ロマン主義思想として表出することを検証する。 これらの研究を遂行するためイギリス及び国内における文学的思想的資料分析、また関連研究会開催とセミナーなどへの出席を計画する。この間、研究分担者平田耕一九州工業大学教授や研究協力者園井ゆり広島大学准教授、杉本美穂福岡女学院大学非常勤講師、ティム・フルフォード教授(ド・モンフォール大学)、サラ・ナイト教授(レスター大学)との研究打ち合わせを行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究の遂行上、次年度において17世紀~18世紀イギリス文学及び思想的資料、及びコンピューターソフトなどの購入が必要となったため物品費を繰り越す。また研究分析の結果整理、研究会開催、研究結果印刷が必要となったため謝金、その他、の経費を繰り越す。 研究計画に従い、より詳細な思想的関連分析のため17世紀~18世紀思想的分野(哲学ロック、デカルト、ホッブスなど、宗教、科学ニュートンなど)及び文学(ミルトン、マーヴェルなど)に関する資料購入、また資料整理収集のコンピューターソフト及び文具などの購入を行う。またその際に分析結果整理補助の謝金を必要とする。 また研究分担者及び研究協力者とのイギリス文学の道徳的主題と国家意識との関連における研究分析過程及び結果についての打ち合わせと研究会開催を2~3回程度行う。その際に会議室使用料経費などを必要とする。 これまでの研究結果を印刷するための経費、その他を必要とする。
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Research Products
(4 results)