2019 Fiscal Year Research-status Report
The Study on the Relationship between Theme of Morality and the formation of the identity of a Nation in the Seventeenth and the Eighteenth century English Literature
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17K02506
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
園井 千音 大分大学, 理工学部, 教授 (70295286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 耕一 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (20274558)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自由 / 共和主義 / ミルトン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は人間の自由の精神を尊重する思想形成の過程をイギリス国民意識形成との関連において16世紀から18世紀までのイギリス文学を中心に検証した。主に①シェイクスピア劇と国民国家意識の成立、②ジョン・ミルトンと共和主義の関連③16世紀後半から17世紀前半のイギリスにおける科学的活動と思想的特徴との関連、④18世紀前半イギリス社会における貧困問題と国民意識との関連を分析した。 ①については、主にシェイクスピアの史劇を分析し、イギリスの国民意識成立の萌芽期に文学が寄与した思想的影響を検証した。エリザベス朝における国教会成立の過程はローマンカトリック優勢のヨーロッパ諸国において、宗教的に分離しかつ独立する立場を明確にしたイギリス国民の精神性を定義づける際に重要である。シェイクスピア文学においては宗教、政治の要素を縦横に描くことによりイギリス人の共感を得、その国民性を醸造することに寄与した文学であることを分析した。 ②についてはジョン・ミルトンとイギリス内戦との関連をミルトンの政治的散文を中心に検証した。特に『第一弁護書』、『第二弁護書』、『離婚論』、『アレオパジティカ』における人間の自由の重要さに対する信念がミルトンの一貫したプリンシプルとして存在したことを国教会、また長老派への懐疑とピューリタニズムへの傾倒とともに明確になったことを分析した。 ③については、16世紀後半から17世紀前半のイギリスにおける科学的文献出版状況の分析により、イギリス社会における自然科学実験活動や科学の商業への応用などが、イギリスにおける経済発展に貢献したことを分析した。 ④においては、イギリス社会における貧困問題と文学との関連においてウィリアム・ブレイクなどの文学を中心に人間の抑圧状態の解放と社会改善の希求の主題について検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進んでいる。研究実績概要に書いた通り、17世紀~18世紀前半のイギリス文学における道徳的主題と国民意識形成との関連の社会的コンテクストを検証するため、イギリスの国家成立の時代である16世紀後半から18世紀までのイギリス社会と文学の関係を分析している。特に現在は①16世紀後半のシェイクスピア史劇(『リチャード3世』『ヘンリー5世』など)における文学的主題のイギリス国民意識形成への影響を当時の歴史書またイギリスのヨーロッパ列強との国境争いなどの歴史的コンテクストと同時に分析する。文学作品の主題における宗教改革の継続とヨーロッパ諸国の影響からの脱却とイギリス国民のアイデンティティー確立の欲求の関連を検証する。 また②17世紀イギリス内戦時におけるジョン・ミルトン、アンドルー・マーヴェルの文学における自由の思想と共和制府の盛衰との関連を中心に検証する。ミルトンの『離婚論』、『アレオパジティカ』における自由の思想が時代の要請として不可欠に存在したこととミルトンの近代的自由思想について分析する。 ③17世紀の知的活動と国民意識形成との関連において科学的発見の活動とイギリス経済発展の影響を分析し、イギリスが国民国家としての基盤を強化したことを考察する。数学的発見と実学、例えば、航海術の発展の関連を出版図書の流布と読者層の検証において考察する。また③との関連においてイギリスの対ヨーロッパ諸国との戦争などの影響による都市における貧困問題と社会改革運動の関連を検証する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究最終年度のため、以下の研究を中心に進める。①17世紀イギリス文学における自由の思想の系譜と18世紀前半の文学との影響関係を分析する。主にはジョン・ミルトン文学とロマン派文学ウィリアム・ブレイクなどとの思想的関連を中心に分析する。特にミルトンの1640年代の『離婚論』を中心とする散文The Judgement of Martin Bucer, Colasterion, Tetrachordon における自由の思想の分析と前期ロマン派文学の思想的影響関連を分析する。 ②ミルトンとオリヴァー・クロムウェルとの関連を宗教的政治的思想関連において分析する。ミルトンとクロムウェルの宗教的政治的共通点と相違点を分析する。イギリス内戦勃発前と護民官政府樹立後における2人の思想的相違点に特に注目する。ミルトンの長老派思想に対する懐疑とピューリタニズムとの関連、共和政府の外国語秘書官としての任務と政治的散文出版との関連、また検閲法と『アレオパジティカ』との関係を共和制府におけるミルトンの政治的主張との関連において分析する。 ③17世紀王立協会設立前後の科学的文献とイギリスの宗教的政治的コンテクストとの関連を検証。数学、医学などの出版物と自然哲学思想の流布と英語表記出版物数との関連などを分析し、イギリス国民の社会身分もしくは宗教的差異を超越した柔軟な知的活動証拠を検証する。 ④これまでの研究結果をまとめ、17世紀から18世紀前半までのイギリス文学における自由追及の主題と国民性形成の関連について纏める。
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Causes of Carryover |
16世紀~18世紀までのイギリス文学と国家意識形成との関連においてイギリス国内外の社会的活動と文学の関連を検証するためにより詳細な歴史的科学的文献の収集が必要である。特に16世紀~17世紀の検閲法と出版図書の社会における流布の関係、イギリス国民の知的活動のさらなる分析。また17世紀イギリス内戦時の王党派と議会派のパンフレット出版事情とその影響の検証のため議事録、出版物のタイトル調査、社会的歴史的資料の収集を行う予定である。また18世紀に関する救貧法や社会的貧困問題、戦争との関係などを検証し、関連する文学作品の道徳的主題との関連を分析する。また18世紀当時の法律、雑誌記事などの収集及び関連する文学的社会的資料収集が必要である。 上記の課題遂行に必要な文献購入費、また研究結果整理分析のための謝金、研究結果印刷のためのその他の費用を繰り越す。
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Research Products
(4 results)