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2017 Fiscal Year Research-status Report

トマス・ハーディにおける男性性詩学―ジェンダー体制の動揺と物質主義、そして現代

Research Project

Project/Area Number 17K02507
Research InstitutionTokyo Metropolitan University

Principal Investigator

亀澤 美由紀  首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (60279635)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2021-03-31
KeywordsThomas Hardy / ジェンダー / masculinity studies
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、トマス・ハーディの文学を男性性の視点から読み返すことを目的としたmasculinity studiesである。その特徴はイブ・K・セジウィックが『男同士の絆』で論じた男性ホモソーシャル性を論の柱においてハーディの後期小説をとらえつつ、セジウィックの論では捉えきれない部分を明らかにすることによって、セジウィックの論に新たな視点を加えるところにある。セジウィックの論の先を見ることで、ハーディの小説の特徴をあぶりだそうとするものである。それを達成するにあたって本研究は、19世紀末の物質主義を分析の視野にとらえることに大きな意義を見出してきた。なぜならば、19世紀末以降、経済力によってジェンダーのヒエラルキーが覆されるケースが小説に多々描かれるようになり、ハーディの小説もこうした新しい事態と無縁ではないからである。男性がいかにホモソーシャル性の原則に則って活動しようとも、19世紀末の高度に発達した信用経済はジェンダーとは無関係に、人間を象徴交換の客体として貶めていくようになる。ハーディの特に後期小説にはそうした状況がはっきりと捉えられている。
上記のことを分析し、論ずるためには、セジウィックの理論と物質主義、信用経済、象徴交換をめぐる理論を総括する必要がある。平成29年度はその理論構築に主な力点を置き、その結果を”Symbolic Economy and the Masculine Identity: Theoretical Grounding”としてまとめた。
勿論、その前提としてはセジウィックの理論がハーディ分析に有効であるという主張がある。それを示すために、本研究が対象とする作品群のなかで最初の作品The Trumpet-Majorを分析し、約10,000wordsの論文にまとめ、セジウィックの有効性を示した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

理論構築を行うにあたって、19世紀全体に視野が広がりすぎ、ハーディ文学とその批評にあらためて焦点を絞り直す必要があり、その手直しに予定外の時間を要したが、研究全体に影響を及ぼすほどの遅れではない。

Strategy for Future Research Activity

The Trumpet-Majorと同じく歴史小説の要素をもつThe Mayor of Casterbridgeを上記の視点で研究する。この作品は、「異性愛を介した男性ホモソーシャル性」に依拠した男と「異性愛を排除した男性ホモソーシャル性」に依拠した男との衝突を描いた物語である。そしてまた、片方の男は筆記と算術に長け、信用経済を操るのに対して、もう片方は知的教養よりも力強い身体と、前近代的な感覚で富を築いてきた男である。その両者のぶつかり合いを、男性性・信用経済・「書く」行為という観点で分析していく予定である。
平成30年度の後半は、The Woodlandersの分析にも着手する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2018

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] Symbolic Economy and the Masculine Identity: Theoretical Grounding2018

    • Author(s)
      Miyuki Kamezawa
    • Journal Title

      人文学報(表象文化論)

      Volume: 514-10 Pages: 61-72

URL: 

Published: 2018-12-17  

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