2020 Fiscal Year Research-status Report
Inheritingthe Romantic Spirit in the Age of Mass Tourism--The Transformation of the Cultural Landscape of the Lake District
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17K02509
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
吉川 朗子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (60316031)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ワーズワス / 湖水地方観光 / 景観保護 / 交通革命 / 大衆旅行文化 / ガイドブック / ロマン主義的旅の精神 / モビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、これまでの成果をいったんまとめ、単著、William Wordsworth and Modern Travel: Railways, Motorcars, and the Lake District, 1830-1940 (Liverpool: Liverpool University Press, 2020)の出版準備を行った。この著書では、交通革命、観光、景観保護、戦争、湖水地方の文化的景観の関わり、そしてそこにワーズワスの詩学がどう関わっているかを論じている。また、2020年12月には、ワーズワス・トラスト主催のオンライン・トークイベント 'Disparate Romantics’(多種多様なロマン主義)の講師として、'Wordsworth and Modern Travel’というタイトルで、ワーズワスが鉄道に抱いていた両義的な思い、自動車旅行者に受け継がれたワーズワス精神について話をした他、日本におけるワーズワス受容についても話をした。 さらに、The Lake District Green Lane Alliance (湖水地方遊歩道保護協会)から依頼を受け、RV自動車やオフロード・バイクが湖水地方の小径に与える悪影響についての短い記事― ‘Wordsworth’s Walna Scar Path and the Damage by Off-Road Motorbikes’を執筆した(出版は令和3年度になる)。 もうひとつ、サブテーマ(1)「湖水地方における景観保護運動の展開」に関して、ワーズワスが湖水地方へ来る旅行者の環境感受性に与えた影響について考えるにあたり、かれの散文『湖水地方案内』(1835)に現れる水の循環のイメージについてテクスト分析を行い、オンライン学会で研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、コロナ禍の世界的広がりで渡航制限があったため、大英図書館や公文書館での資料調査ができなかった。オンラインで入手できる資料、また図書館司書に依頼して電子データを送ってもらうなど、多少の工夫は行ったものの、十分とは言えない。また、国際学会での発表も二つ予定していたが、ひとつは中止となり、もう一つはオンラインでの開催となり、発表原稿の長さを短縮することが求められた。そうした事情で、当初の予定から考えると十分な成果とは言えず、(3)やや遅れている、と評価する。けれども、これまでの研究成果を一冊の単著にまとめて出版できた点、『湖水地方案内』など、作品のテクスト分析を丁寧に行えた点は評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ワーズワスの『湖水地方案内』(1835) は、詩人の死後もさまざまな出版社から簡略版が出されたり、抜粋という形で利用されるなどして、19世紀半ばから20世紀初頭の湖水地方観光と景観保護運動に影響を与えている。このことに関しての一次資料の調査が、令和2年度には不十分であったため、渡航制限が緩和されたら現地の公文書館を訪れ、調査を行いたい。今年度中に渡航制限が緩和されない場合には、デジタル資料で可能な限り調査を行う他、テクスト分析の方に重点をおいて考察をすすめる。また関連批評書の収集、読み込み、評価をすすめる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、参加予定であった国際学会が開催されず、また、資料調査予定であった公文書館も閉じていたため、旅費の使用がなかった。次年度に繰り越した研究費は、渡航制限が解除されれば資料調査のための旅費に充てる。制限が解除されない場合は、図書・資料の購入、パソコンなどの研究設備の拡充にあてる。
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Research Products
(3 results)