2017 Fiscal Year Research-status Report
シェイクスピア劇の小唄―テクストに埋め込まれた聴覚的連想イメージ・コード
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17K02514
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
中野 春夫 学習院大学, 文学部, 教授 (30198163)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シェイクスピア劇 / 小唄 / バラッド / 大衆歌謡文化 / エリザベス朝イングランド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は4年間の期間でシェイクスピア劇に組み込まれた小唄70曲にかんして網羅的に同時代の大衆歌謡文化との関連性を調査・分析し、シェイクスピア劇の小唄の特性を聴覚的な娯楽文化の脈絡から解明する。初年度はシェイクスピア劇の小唄それぞれに関し元歌の有無と節回しを調査し、バラッド販売に関する実態を調査した。 初年度において本研究はシェイクスピア劇の小唄に関する従来の一連の書誌学情報(J.H.Long(1955,1961,1971), F.W.Sternfield(1963), P.J.Seng(1967), J.M.Ward(1992), R.Duffin(2004), D.Lindley(2006))を整理し、シェイクスピア劇の小唄それぞれに関し元歌の有無の点検と節回しの特定化の作業を行った。そのさい本研究はP.J.Sengのように分析対象の小唄を歌詞が掲載されているものに限定せず、『十二夜』の「三人の陽気な男たち(Three Merry Men)」のようにタイトルだけが言及され、歌詞は収録されていないものの舞台上で歌われていた可能性がある曲も検討した。 また本研究の初年度は対象時期を1590年から1610年までに絞り、印刷出版組合に登録されたこの時期のバラッドを可能な限り調査し、好まれたトピック、ジャンルの傾向を調査し、識字率の関係からバラッド作者(販売業者)がターゲットとして想定したのは一定の収入をもつ男性であし、ることを突き止めた。本研究は(1)元歌関連の分析、(2)商品としてのバラッド、(3)エリザベス朝イングランド社会の諸制度を背景としたシェイクスピア小唄の歌詞の再検討、の3分野に分けて調査・分析を行い、初年度は(1)および(2)の分野で重点的に遂行した。その成果は研究論文「シェイクピア劇の小唄の特性とコンヴェンション」においてにおいて発表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究は現時点で本課題に関し論文3点、講演1回を発表し元歌の書誌学的情報に関する基本的なものを把握しているうえ、初年度に先行研究の成果を全般的に再検討している。現時点で元歌が存在することが確認できる小唄については、その歌詞を収集し(設備備品・バラッド関連一次資料の購入)、その曲のテーマや状況がどう設定されているのか、歌詞の内容をすでに分析しつつある。書誌学情報に特化する先行研究では元歌の歌詞が具体的に分析・解釈されることが稀であるが、初年度ではバラッドの歌詞の解釈を新たに同時代の社会制度の脈絡から行った。また先行研究の書誌学情報ではタイトルだけが言及され歌詞は引用されない場合が多々あり、マニュスクリプトで残っている資料については所蔵機関に赴き閲覧・収集した。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目の平成30年度はシェイクスピア劇の小唄に対する従来の解釈を可能な限り収集したうえで、(3)エリザベス朝イングランド社会の諸制度を背景としたシェイクスピア小唄の歌詞の再検討の作業を重点的に行う。成果のチェックを行うとともに、新たな情報を得る場として定期的に研究会を設け、当該年度に得られた成果は論文もしくは学会発表によって公表する。
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Causes of Carryover |
年4回開催予定の研究会のうち一回分の支出を次年度に回したため。
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Research Products
(3 results)