2018 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Toxic Discourse hinted by the Mythification of Narratives in Obama's Hiroshima Speech
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17K02519
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Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
岩政 伸治 白百合女子大学, 文学部, 教授 (90349142)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 汚染の言説 / 核なき世界 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度に実施した研究の成果についての具体的内容は以下の通りである。 平成29年度に行った研究で注目した①汚染や被爆について語られてきた「汚染の言説」の言語的特徴、②社会で果たしてきた役割、③オバマ元大統領がヒロシマ・スピーチで示唆した「終わりのない物語」創造への関わり方について、平成30年度では、アメリカのエコフェミニスト、テリー・テンペスト・ウィリアムスが著した近年の作品群から『大地の時間』(The Hour of Land, 2016)に焦点を当て、具体的には翻訳と言説分析の2つのアプローチを通して考察した。 今回得られた収穫は、汚染の言説が持つ時限的な制約を解決するための可能性が『大地の時間』の分析によって得られたことである。ここでいう「時限的な制約」とは、例えば広島では被爆体験を語る語り部たちの多くがこの世を去り、また残された語り部たちも高齢のため、次世代の人々に被爆体験を語り継ぐことが物理的に難しくなっている現状を意味する。ウィリアムスが『大地の時間』で示唆したリエンアクターという概念は、汚染の言説が持つこの「時限的な制約」という課題を補完する可能性を持つ。ウィリアムスが示唆するリエンアクターとは、歴史上の出来事を、その時その時間、その場所に居合わせた歴史上の人物に成り代わって再現して見せる行為体のことを指す。上記の成果について、台湾で行われた文学・環境学会国際シンポジウムで発表を行い、研究者たちからの有益なフィードバックを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テリー・テンペスト・ウィリアムスが著した『大地の時間』の翻訳出版は本研究を推進する上で有益であったこと、また研究の途中経過を相対化する上で、2018年10月に台湾師範大学で行われた文学・環境学会国際シンポジウムで発表を行い、研究者たちからの有益なフィードバックを得ることができたことが理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画で掲げた項目のうち、以下の2点が特に今後の研究の推進方策において有効であると考える。 ①アメリカのカリフォルニア大学デイビス校で行われる米国文学・環境学会年次大会に参加し、講演やシンポジウムを聴講、研究者と意見交換をすることが、相対化する推進方策の有効な手段となることを期待している。 ②所属する学科より在外研究取得の推薦を頂き、大学より許可を得ることができた。visiting scholarとしてアメリカの大学に籍を置き、図書館でリサーチをすすめ、またこの分野に関わる教員及び、大学院生らとの議論を活用し、研究の推進に役立てたい。
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Causes of Carryover |
以下の三点が主な理由として挙げられる: ①想定していた国際学会への応募が一部受理されなかったこと②分析のための資料購入が予想を下回ったこと③次年度の在外研究で出費が増えることを想定して支出を控えたこと 次年度は所属学科より推薦頂いた在外研究が大学から認められたため、①海外での施設利用や資料収集にかかる費用、②主に北米における学会参加や研究会の開催などで必要とされる費用、を使用計画として考えている。
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Research Products
(3 results)