2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Toxic Discourse hinted by the Mythification of Narratives in Obama's Hiroshima Speech
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17K02519
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Research Institution | Shirayuri University |
Principal Investigator |
岩政 伸治 白百合女子大学, 文学部, 教授 (90349142)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 被爆の表彰 / 汚染の言説 / 歴史的再現 / 環境人文学 / エコクリティシズム / 人新世 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで行ってきた被爆の表象を「汚染の言説」として分析する試みは、2018年に台湾師範大学で行われた「東アジアの戦争、平和そして環境」をテーマにした国際シンポジウムに採択され、このテーマに関心を持った世界的学術出版大手であるラウトリッジが発行する論集の最新刊Mushroom Clouds: Ecocritical Approaches to Militarization and the Environment in East Asia (2021)へと結実した。この出版は、環境人文学が、環境環境そのものの表象から、人間を含めた生態系の破壊という戦争の爪痕と、平和構築という発展的なテーマを扱うことへの、欧米のアカデミアの関心の高さとその学術的独自性への評価を示唆するものである。 こうの史代の原爆マンガ『夕凪の街、桜の国』とオバマ元米国大統領の「広島演説」を分析の対象としたことは、今後の研究の展開において、環境人文学に新たな学術的独自性をもたらした。作家テリー・テンペスト・ウィリアムスが著した被爆体験とその家族の歴史を「再現」する語りをヒントに、本研究では歴史をめぐる表象で論じられてきた「歴史的再現」が、「詩的」ナラティヴによってリクリエイト(再創造)されることを目論むものである。 2021年度は7月10日に行われた米国ソロー学会の発表 “Reenacting Thoreau in the Writings of Terry Tempest Williams”で、ウィリアムスの歴史的再現に19世紀に奴隷制に反対して自ら牢獄に入ったソローの影響を遡及、10月1日に行われた日本ソロー学会の発表「テリー・テンペスト・ウィリアムスの『大地の時間』にみる国立公園とリエンアクトメント」で、先に述べた、「歴史的再現」が、「詩的」ナラティヴによってリクリエイト(再創造)されることを検証的に考察、最後に韓国環境・文学学会シンポジウム「国際環境人文学研究動向と展望」では議論形式で、同テーマを問題提起、ディスカッサントから有益なレビューを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べたように、2021年度はこの最新刊で論じた考察の是非を研究発表やシンポジウム、また国際学会などで研究者らと交流することでレビューを行うことを活動の中心として希望した。しかしながら、コロナ禍の影響で学会参加はオンライン実施に限られ、研究者らとの学術交流においても十分な活動が行えなかったことは否めない。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍による様々な規制が緩和されつつある2022年度は、作家テリー・テンペスト・ウィリアムスが著した被爆体験とその家族の歴史を「再現」する語りをヒントに、2021年度は十分にできなかった、最新刊で論じた考察の是非を研究発表やシンポジウム、また国際学会などで研究者らと交流することでレビューを行う活動が十分行えると考える。
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Causes of Carryover |
当初これまでの研究成果のレビューを求めるべく計画していた国際学会への参加や建機勇者らとの学術交流が、コロナ禍の様々な規制により著しく制限されたことが主な原因である。幸い欧米諸国を中心にこれまでの様々な規制が緩和されつつあることから渡航費用や学会参加費用を中心に定期的に使用が可能になるものと考えられる。
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Research Products
(3 results)