2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K02530
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
阿部 曜子 四国大学, 文学部, 教授 (60294732)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | グレアム・グリーン / 冷戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は一般的な英文学史上では依然としてカトリック作家として位置づけられているグレアム・グリーンが、冷戦構造が明確であった20世紀後半に、第三世界を中心に複雑な政治的状況に深くコミットしていたことに注目し、その関わり方をメディアに焦点を当てて考察するものである。グリーンが当時の新聞・雑誌などのメディアにどのように向き合い、いかにメディアを利用してきたか(あるいは利用されてきたか)を、この時期に書かれたフィクションや、『タイムズ紙』などにグリーンが寄稿した記事を分析しつつ進めていく。2018年度は、ハイチや中南米でのグリーンの冷戦時の足跡を辿る予定であったが、文献資料が十分に収集できなかったことや、グリーンの比較文学的テーマでのシンポジウムや機関誌への執筆依頼があったこともあり、若干の変更を余儀なくされた。2018年度の研究内容の詳細は以下のとおりである。 1.グリーンの映画論に関する書物の書評の執筆。 2.冷戦中期のグリーンの作品『喜劇役者たち』の精読と分析。論文としてまとめる予定であったが、研究書等の読み込みが十分でなく、論文作成に至っていない。 3.グリーンと遠藤周作の比較考察についての論文の執筆。前年度に学会の依頼で行ったシンポジウムでの内容を論文としてまとめた。 4.冷戦時のグリーンのエスピオナージについての資料の収集と文献の分析。冷戦時代のイギリスの情報活動に関する文献は十分に揃えることができたが、分析に関してはまだ作業半ばである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」ことの理由は、当初予定していた「中南米を中心とした冷戦中期のグレアム・グリーンの記事やフィクションの精読と分析」が十分にできなかったことによるものである。グリーンと遠藤の比較文学的テーマでのシンポジウム後の論文執筆依頼や、グリーンと映画関係の研究書の書評依頼があり、これらの作業に時間を要したため、研究に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年8月の遠藤周作学会で、グリーンの冷戦後期のフィクション『ヒューマン・ファクター』をとり上げ、遠藤とグリーンの比較文学的考察について発表することが決まっているため、その準備の一環として、1970年代のグリーンの足跡やキム・フィルビーとの関係を辿る文献を読む。 そして9月にはイギリスに出向き、冷戦中・後期(1960年~1980年代)のグリーンに関する資料収集を行う。ロンドンの大英図書館で新聞や雑誌の記事に当たるほか、イギリス国立公文書館では、MI6などの情報機関にまつわる文書を探す。 また冷戦中・後期のグリーンに関してのことを論文にまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
購入を計画していたノートパソコンが予算より安く買えたこと、また購入予定の文献の発刊が先に延びて購入できなくなったことなどが原因で当初の予算が余ることとなった。この残高は次年度の文献購入費に充てたいと考えている。
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Remarks |
『図書新聞』3364号(2018年8月18日)佐藤元状著『グレアム・グリーン ある映画的人生』の書評
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