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2018 Fiscal Year Research-status Report

世紀転換期から俯瞰するソフト・パワーとしての冷戦期合州国表象文化の研究

Research Project

Project/Area Number 17K02535
Research InstitutionAkita University

Principal Investigator

村上 東  秋田大学, 教育文化学部, 教授 (80143072)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 中山 悟視  尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (40390405)
塚田 幸光  関西学院大学, 法学部, 教授 (40513908)
大田 信良  東京学芸大学, 教育学部, 教授 (90233139)
Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
Keywords合衆国文化 / 冷戦 / 世紀末 / 文学史 / 文化史
Outline of Annual Research Achievements

合衆国の政治と文化が覇権国家にふさわしいものとなってゆく過程/変化が顕著になる世紀末を研究の射程に含めたことにより、冷戦期の文化を分析・解釈する際の視点の置き方、理解の仕方の幅がある程度広がった点が昨年度の収穫だった。例えば、中山が考察の範囲に収めた映画『オズの魔法使い』やクリスマスの問題、言い換えれば大衆文化の想像力と政治性は、冷戦期以前に覇権国家合衆国に見合った魅力、求心力を備えつつあった。また、『シネマとジェンダー』以来持続して塚田が取り組んできた男性性の問題も、世紀転換期を視野に収めてはじめて判る事象がある。例えば、ボディビルが大衆の想像力に焼きつく世紀転換期と覇権国家が世界で他国を寄せつけない軍事/政治の影響力を行使するようになる冷戦期とはおよそ半世紀近いずれがある。ベトナム戦争の時代には、頼りにならないユダヤ系シュレミール風の男性像が説得力を持つようになっており、ジョン・ウエインの男性マッチョな男性像は時代遅れである。表象/象徴のほうが先を行っているのである(『アメリカ映画の政治学』所収の『泳ぐ人』論参照)。政治と表象(ソフト・パワー)のこうしたずれについてさらに検討が必要となろう。ミネルバのふくろうは日が傾けば飛ぶ準備をする、ということであろうか?
世紀転換期を視野に入れた成果を含む論文集『メディアと帝国』は編集が最終段階に入っているし、その次の論文集『ヒッピー世代の諸先輩』(仮題、小鳥遊書房を予定)とともに今年度中の刊行を目指している。この二冊は前者が世紀転換期に的を絞ったもの、後者が冷戦期後期で、いわゆる冷戦期全盛の50年代、60年代を挟み撃ちしたかたちになる。言い換えれば、二十世紀文化史(つまりはソフト・パワー史)に近づく私たちの試みとなっているのである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

塚田が編集(企画の段階から彼中心に動いている)を受け持っている『メディアと帝国』は2016年度日本英文学会全国大会シンポジアム(於京都大学)が出発点となっている。執筆、調整、編集で、予想をはるかに越えた時間をとってしまったが、編集作業の最終段階に入りつつあるので、今年度中には成果を世に問うことが叶うと思われる。シンポジアム実施から三年経過するので、努力を傾注したい。
中山が編集を担当している『ヒッピー世代の諸先輩』(仮題)は、実力のある執筆者、気鋭の若手が寄稿してくれることとなり、企画の段階(5月末日に原稿を集める)では大いに期待できるものとなっている。
上記の二冊をできるだけ早く出版し、研究活動を次の段階に進めてゆきたい、と切に願う。

Strategy for Future Research Activity

私たちは2011年から開始した基盤研究(C)「冷戦期における合衆国ナショナリズムとソフト・パワーとしての表象文化の研究」以来、北米文化・文学研究の一部である問題系を扱っているとはいえ、他国殊にイギリスを視野に入れてきた。いや、英文学研究者である大田を分担研究者として共同作業を続けている大きな理由が、英米文化・文学(殊に批評と研究)の密接な、そして複雑な関係に着目してきたからに他ならない。当初から、そして今後とも一国の地域研究には収まりきれない問題だ。ソフト・パワーとは他国を動かす文化資本、文化の政治力なのである。
英米の密接な関係については太田を中心にかなりの程度成果を活字にしてきたが、研究発表などには既に着手してはいるものの、大々的には活字にまとめていない領域として、合衆国(覇権国家)のソフト・パワーが日本(日本文化)に対して行使してきた影響の研究がある。村上は草野心平、辻井喬などに関する口頭発表をしていても、情けないことに論文にまとめていない。今後努力すべき課題である。
近年、東南アジア、アフリカを研究対象とした冷戦研究が加速度的に深化している。単に米ソの対立、パワー・バランス云々という水準をはるかに越えて、文化の問題も掘り下げられている。そうしたアジア研究などの成果をいかにして私たちの問題意識に組み込むのか、新たな共同研究の可能性をいかにして見つけてゆくか、第二次大戦中のいわゆる枢軸国であった日本とアジア諸国の関係と戦後である冷戦期におけるアジアと日本とをどうみてゆくのか、以前からの宿題で右往左往、試行錯誤が続いているにも拘わらず、研究の地平は広がっている。しかも、重たい倫理性を有する諸問題の絡まった糸の束に高度な研究力で対処しなければならないであろう。しかし、ソフト・パワーの
研究を続けるのであれば、意識せざるを得ないのである。

Causes of Carryover

勤務校の用務が集中していたことと、日本アメリカ文学会全国大会(本年度は東北支部が担当で仙台で開催する)準備の指揮をとっていたため、予定より研究活動に費やすエフォートが少なかった。本年度は計画的に研究日程を消化する。

  • Research Products

    (16 results)

All 2019 2018

All Journal Article (5 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (8 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results) Book (3 results)

  • [Journal Article] 『ライフ』・ナショナリスティック ヘミングウェイ、スペイン、ニューディール「南部」2019

    • Author(s)
      塚田幸光
    • Journal Title

      フォークナー

      Volume: 21 Pages: 108-122

  • [Journal Article] オクスフォード英文学とF・R・リーヴィスの退場――『グローバル冷戦』におけるポスト帝国日本の『英文学』とロレンス研究2019

    • Author(s)
      大田信良
    • Journal Title

      D.H.ロレンス研究

      Volume: 29 Pages: 23-42

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』と記憶/トラウマ論再考の可能性2018

    • Author(s)
      大田信良
    • Journal Title

      世界文学

      Volume: 128 Pages: 14-21

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 『読むことのアレゴリー』と倫理の問題/「エコノミーにおける転換2018

    • Author(s)
      大田信良
    • Journal Title

      一橋大学大学院言語社会研究科2018年度紀要『言語社会』

      Volume: 13 Pages: 40-52

  • [Journal Article] ド・マン特集 序文「ポール・ド・マンを読むこと/書くこと」2018

    • Author(s)
      大田信良
    • Journal Title

      一橋大学大学院言語社会研究科2018年度紀要『言語社会』

      Volume: 13 Pages: 8-13

  • [Presentation] Poet in a Double Bind: Tsujii Takashi and the Lost Tradition2018

    • Author(s)
      Murakami Akira
    • Organizer
      Israeli Association for Japanese Studies Thematic Conference 2018
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』と記憶/トラウマ論再考の可能性2018

    • Author(s)
      大田信良
    • Organizer
      世界文学会第2回連続研究会:『時代と文学』
  • [Presentation] オクスフォード英文学こそがF・R・リーヴィスの退場を規定した歴史的可能性の条件だったのか?――『グローバル冷戦』におけるポスト帝国日本の『英文学』とロレンス研究2018

    • Author(s)
      大田信良
    • Organizer
      日本ロレンス協会第49回大会
  • [Presentation] “After New Criticism”の、あるいは、(再)制度化されたモダニズムの、『英文学』・批評理論―― 転換期・移行期としての『グローバル冷戦』2018

    • Author(s)
      大田信良
    • Organizer
      日本英文学会東北支部第73回大会
  • [Presentation] 「わたしは機械でありたくない」;ヴォネガットのSF的想像力と人間性の探求2018

    • Author(s)
      中山悟視
    • Organizer
      日本英文学会中国四国支部第71回大会シンポジアム「人間性の更新」
  • [Presentation] “Framing/Filming Hemingway: Wartime Politics in To Have and Have Not”2018

    • Author(s)
      Yukihiro TSUKADA
    • Organizer
      Hemingway in Paris: XVIII International Hemingway Conference
  • [Presentation] “Invisible Ethnicity: Faulkner and Garcia Marquez’s Mexican Connections”2018

    • Author(s)
      Yukihiro TSUKADA
    • Organizer
      Faulkner and Garcia Marquez Conference
  • [Presentation] ニューディール・クロスメディア スタインベックと「大衆」文化の政治学2018

    • Author(s)
      塚田幸光
    • Organizer
      アメリカ文学会ワークショップ「Steinbeckとアメリカ民衆文化の想像力—没後50年Steinbeck研究の現状と課題(ジョン・スタインベック協会)」
  • [Book] 「「大衆」とフォト・テクスト;ニューディール、エイジー、文化の政治学」藤野功一編『アメリカン・モダニズムと大衆文学 時代の欲望/表象をとらえた作家たち』2019

    • Author(s)
      塚田幸光
    • Total Pages
      300
    • Publisher
      金星堂
    • ISBN
      978-4-7647-1189-1
  • [Book] 「ハイブリッド・エスニシティ—エドワード・ズウィック『マーシャル・ロー』と文化翻訳の可能性」塚田幸光編『映画とジェンダーエスニシティ』2019

    • Author(s)
      塚田幸光
    • Total Pages
      309
    • Publisher
      ミネルヴァ書房
    • ISBN
      978-4-6230-81516
  • [Book] 「ドキュメンタリー・アメリカ ニューディールの文化生成と『怒りのぶどう』の政治学」中垣恒太郎・山内圭・久保田文・中島美智子編『スタインベックとともに 没後五十年記念論集』2019

    • Author(s)
      塚田幸光
    • Total Pages
      印刷中
    • Publisher
      大阪教育図書

URL: 

Published: 2019-12-27  

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