2020 Fiscal Year Research-status Report
W.B. Yeats, Pound, Hemingway and Kyogen: Poetics of Laughter and MA
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17K02542
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
真鍋 晶子 滋賀大学, 経済学部, 教授 (80283547)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | W.B. イェイツ / エズラ・パウンド / アーネスト・ヘミングウェイ / ラフカディオ・ハーン / 能狂言(能楽) / 間(ま) / アイルランド / 詩学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来「笑い」と関連づけられることが少なかったW.B.イェイツが、「笑い」の演劇たる日本の古典芸能、狂言に劇作の突破口を見出した新局面を解明し、また、日本的原理である「間」の詩学が英語圏モダニズムに果たした意義を、イェイツのみならず、イェイツを能狂言に導いたエズラ・パウンド、さらにパウンドを師と仰ぐヘミングウェイの作品を検討することで、光をあてるものである。 当初2017年度より2019年度までの3年計画で遂行予定であり、順調に成果を出し、2020年3月パリで開かれる研究会で、最終結果報告の一部を発表し、一定の区切りをつける予定であったが、2020年4月に母親が心臓の緊急手術をすることになり、介護のための1年延長を認められた(本研究会は新型コロナウィルス蔓延のためパリがロックダウンとなり、中止となったので、いずれにせよ参加不可能であった。)2020年度もコロナ禍で、海外出張が不可能ななか、国内で可能な研究を続け、学術書_Yeats and Asia: Overview and Case Studies_(Cork University Press)の一章として、イェイツ、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)、フェノロサ3者の関わりについての論文が掲載された。また、_International Yeats Studies_の特集号への論文の編集・校正を繰り返し、完成させた(2021年4月出版)。さらに、2022年出版予定の_The Oxford Handbook Series_のイェイツの巻の一章への原稿、ヘミングウェイの研究書(彩流社)への入稿と本研究の一定の成果を目に見える形で示した。また、新たにイェイツとの関係で賀川豊彦研究を開始した。ただし、本科研を用いては海外出張を予定していたので、コロナ禍のため、未使用、再度延長をすることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記2020年度への過程でも予定以上の進捗をした。 2017年度 I. 日愛外交関係樹立60周年企画実行委員長として、イェイツとハーンの作品の狂言化を大蔵流狂言茂山千五郎家に委嘱し、そのアイルランド公演を企画・運営、公演時に講演。帰国後、同公演を3回企画と講演。II. アイルランドと狂言について、一般誌、大学文化事業のプログラム、新聞、学会会報等に寄稿。事典、書評を執筆。III.国内外で学会発表。 2018年度 I.パウンド、アイルランドと狂言などの論文他、研究書、事典、 雑誌に掲載。II.International Yeats Societyと日本のイェイツ協会の合同学会の企画と運営(能舞台での前年と同じ公演と能楽入門を含む)および基調シンポで論文発表。その他、韓国5th World Humanities Forumでの招聘発表 など3つの国際学会で論文発表 、国内でも招聘講演を行う。III.映像プロデューサーLynn Novickによるヘミングウェイに関するインタビューを受ける。(2021年アメリカ公共放送PBSからドキュメンタリーとして放映)。小泉八雲朗公演(朗読:佐野史郎、音楽:山本恭司)を企画、島根県立大学小泉凡名誉教授と講演。 2019年度:I. 学術書(2冊)、学術雑誌に各1章掲載。II, IASIL、Yeats Summer School、International Yeats Society等3種の国際学会で論文発表。II.公演と講演:ハーンに関わる滋賀大学文化事業で、俳優、琵琶奏者、書家によるコラボ公演の企画運営と公演時の講演、新作能『高虎』公演企画、公演前講演。 期間を通して、調査・資料蒐集、Paula Meehan, Theo Dorganなど詩人、他の研究者、能楽師から聞きとり及び、国内書学会の事務局長、理事、編集委員などとして企画・運営・査読も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年の海外出張による結果報告は、コロナ禍の状況から困難と判断。代わりに、期間を通じて研究を続けてきた、W.B. イェイツの劇『猫と月』および詩「猫と月」に関する研究会を9月に開催、私自身は企画者であると同時に論文発表者となり、他の研究者2名、および狂言師1名の合計4名をパネリストとするシンポジウムとする。関西アイルランド研究会との共同開催とし、他分野の研究者も参加する学際的企画とする。予算執行次第で規模はかわるものの、その結果を冊子としてまとめあげたい。 その他、2021年5月に開かれる日本英文学会で、昨年行うはずであったがコロナのために持ち越された、アメリカとアイルランドの舞台に関するシンポジアムの司会・構成・発表を、昨年以上に発展させた形で、行う予定である。そこでは、本科研で研究を遂行した研究から発展させ、エズラ・パウンドが書いた「狂言」や、パウンドの詩への能の具体的な現れなど、本研究の成果に基づく新しい研究の方向も示す発表を行う。このように、今後は、本研究で打ち立てた成果に基づき、新たに、パウンド、イェイツ、ハーンにおける、能楽や日本の伝統・文化との邂逅についての新たな意義の発見、さらにそれが逆に現代の能楽にもたらしている影響、さらには、現代の世界に果たす日本の古典芸能の意義を深めていく予定である。そして、それを、ZOOMなど新たな形で再開される国際学会、国際的学術誌、書籍への論文発表の形で、世に問い続けるつもりである。また、私の研究の特徴の一つである、実際の能楽・朗読公演への参加と、企画・実施も、コロナ禍で制限はあるものの、できる限り続ける予定をしている。また、本研究遂行中に見出した、賀川豊彦研究を行い、イェイツと日本の繋がりの新局面を探る。
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Causes of Carryover |
本研究は、2017年度より2019年度までの3年計画で遂行し、順調に成果を出していた。最終年度末、2020年3月パリでの研究会において、最終結果報告の一部を発表し、一定の区切りをつける予定であったが、緊急な介護のための延長を認められた(結果的には本研究会はコロナ禍で中止)。2020年度もコロナ禍で、海外出張が不可能ななか、国内で可能な研究を続け、国際的学術書に論文が掲載された。また、国際的学術誌、学術書への論文を数本完成、投稿し、また、本研究の発展形での新たな研究を開始した。ただし、本科研を用いて、最終成果報告のために海外出張を予定していたが、コロナ禍のため未使用、再度延長をすることとなった。2021年度も海外出張の予測が立たず、成果報告が出来る国際学会もオンライン開催の可能性があるため、成果報告の研究会・シンポジウムを国内で企画、開催し、予算内で可能なかぎり、結果を冊子とすることに計画を変更し、本研究の成果とする予定である。
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Research Products
(16 results)