2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02547
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
城戸 光世 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (10351991)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 19世紀アメリカ文学 / 女性作家 / 旅行記 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年に執筆した学術論文、"Travelers in Ecological Communities--Rereading Sarah Orne Jewett in the Age of Ethical Turn"が、『Ecocriticism Review』第13号(2020)に掲載された。これは対象をアメリカン・ルネサンスだけでなく19世紀後半のローカルカラー文学の女性作家にも拡げ、サラ・オーン・ジュエットの作品にみられる旅と旅人の表象やモチーフを、19世紀後半のアメリカにおける野外ブームなどと絡めて論じたものである。また彩流社から2020年度に刊行予定であった共著『アメリカ文学に見る親密圏のエコノミー』(仮)に、「家政学の誕生と家庭性神話の再考――チャイルド、ビーチャー、ストウ」というタイトルの論文を提出済みであるが、諸事情で出版は遅れている。本論文は、リディア・マリア・チャイルド、キャサリン・ビーチャー、ハリエット・ビーチャー・ストウの三人の女性作家を扱い、彼女たちのdomestic manualと呼ばれた家政手引書を当時のアメリカ社会における家庭性やジェンダー・ロールの概念と絡めて論じたものであるが、ビーチャーとストウは、ニューイングランドから当時のアメリカ西部や南部、ヨーロッパまで広く移動や旅を繰り返しており、そのことが彼女たちのdomestic manualとどうかかわっているのかについても触れている。また本年は、本来であれば、日本英文学会関東支部の第18回秋季大会における移民や移動をテーマとするシンポジウムに招待され登壇予定であったが、このコロナ感染拡大防止のために大会が中止となり、学会での研究発表の機会がなくなった。しかし同テーマのシンポジウムは2021年度秋にスライドでオンライン開催されることが決定しており、そちらに登壇する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
19世紀アメリカ女性たちのイギリスおよびアメリカ西部の旅行の実体とその旅行記については、2019年度までは順調に海外調査を実施し資料収集・分析しながら研究を進めてきたものの、その研究成果の発表場所となる学会などが昨年度はコロナウィルスの関係で中止あるいは延期となったことで、順調に研究成果を発表することができなかった。また計画していたイタリアでの調査については、その研究成果を2021年度の二つのシンポジウムで発表する予定であったが、春に現地のアメリカン・アカデミーなどで資料収集や調査を行う予定だったものの海外渡航制限があったために実施できず、計画を変更することとなった。一部内容を変更し、文献調査等を基にした発表を2021年度に三つの別々の学会シンポジウムで行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は本来であれば昨年度が最終年度であったが、コロナウィルス感染拡大のため海外での資料収集や調査、学会活動のための渡航もできず、国内学会も多くが中止や延期となったため、2020年度は主にインターネットを利用したデジタルアーカイブや書籍等で資料を集め、論文等を書く傍ら研究を進めた。その成果を2021年度に行われる三つの学会のシンポジウム(5月九州アメリカ文学会シンポジウム、9月のフォークナー協会年次大会シンポジウム、10月の英文学会関東支部シンポジウム)において、それぞれ異なる女性の旅行記(イーディス・ウォートン、ソファイア・ピーボディ、カークランド他19世紀における様々な女性たちのアメリカ西部旅行記)を扱った研究発表として行い、その成果を公開したいと考えている。またその一部は学会誌等に投稿して公開する予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画に必要なPC関連機器や資料(図書等)の購入、謝金などについてはほぼ支出計画通り予算執行できたものの、2019年春から2021年春まで世界的なコロナ・ウィルス感染の拡大により、予定していた海外出張(資料収集や調査)や国内出張(学会参加)などがまったくできなくなり、登壇予定であった学会の大会そのものも中止になるなど、旅費や学会参加に関わる支出がまったくなかったことが、次年度使用額が生じた大きな理由である。しかし2021年には、おそらくオンライン開催だと思われるものの、本年度から延期になった大会をはじめ、本研究課題に関するシンポジウムに三つ招待登壇する予定であり、そのために必要な資料や文献を追加でそろえること、また資料整理の補助やネイティヴ・チェックなどでの謝礼金、共著論文印刷費用などでの支出を考えている。
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Research Products
(1 results)