2019 Fiscal Year Research-status Report
Dissemination of American Character and Publishing: Rhetoric of Progressive Isolationism
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17K02551
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Research Institution | Gakushuin Women's College |
Principal Investigator |
佐久間 みかよ 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (00327181)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アメリカン・キャラクター / ジョナサン・エドワーズ / エマソン / ホーソーン / メルヴィル / トウェイン / アメリカ国民文学 / アメリカン・ルネサンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、メルヴィルとキャラクターの関係についてアメリカ詩人に関するキャラクターについて考察し、ニューヨークで開かれた国際メルヴィル学会において口頭発表を行った。アメリカ国民文学の枠組みを作った19世紀のジャーナリズムの動きと、そこから生まれたアメリカン・キャラクターとしての詩人像を参照枠とし、ニューヨークを活動の場としたメルヴィルがどのような影響を受け、小説家から詩人になったかを中心に発表を行った。 また、これまでのまとめとして、アメリカン・キャラクターが、アメリカの歴史と連動しどのように変遷したか、ピューリタン時代から19世紀中頃のアメリカ国民文学の成立、そして現代に至る流れの中で概観した。アメリカ人作家の置かれた状況の変化とそれへの対応を総括し、単著『個から群衆へーアメリカ国民文学の鼓動』として春風社より出版した。その際、「丘の上の町」、「リバイバル」、「コミュニティ」、「パフォーマンス」、「戦死者」、「首都」、「パラダイス」、「聖地巡礼」、「コスモポリタン」、「ボーダーランド」をキーワードとし、作家としては、トマス・シェパード、ジョナサン・エドワーズ、ラルフ・ウオルドー・エマソン、ハーマン・メルヴィル、マーク・トウェイン、W.E.B.デュボイス、サンドラ・シスネロスを取り上げた。アメリカが国家として成り立ち、多民族国家となっていく過程において、作家たち自身が持つキャラクターと、彼らが創造したキャラクターが社会の変化に呼応して変容していく過程を捉えることができた。 アメリカ文学を形作った個性の変遷をたどり、アメリカ文学の持つ個性と国家のせめぎ合いから生まれた緊張関係の中で生まれた文学の特徴を、テーマとレトリック、そして社会の動きとの関連の中で考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカン・キャラクターの変遷をまとめることで、ピューリタンから現代作家までの流れをアメリカ的個性がどのように変遷したか単著にまとめることができた。アメリカン・キャラクターという概念で19世紀国民文学を捉えると、その前後の動きとどうかかわってくるか、植民地時代から現代に至る歴史との関連で考察した。クロノロジカルな分析から、それぞれの時代の特徴が明らかになり、孤立主義的レトリックについても一枚岩的な概念ではなく、植民地時代から19世紀をへて20世紀へと次第に変化していく様を確認できた。 個人の孤立と国家の孤立が、あるときは共振しある時は反発しながら、アメリカン・キャラクターが形成されていく過程についての大枠の提示ができたと考える。そうした中でアメリカ文化が特徴をもってあらわれる19世紀文学の持つ意義について確認できた。今後はさらに19世紀作家のネットワークの研究が必要となったので、これらを中心に2020年度において研究していく指針が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
アメリカン・キャラクターについて、個人の個性に帰するものと、集団としての個性に帰属するものとの双方向の研究の必要性が見えてきた。そこで、各作家が属していたネットワークについて研究し、人種や地域を超えたネットワークによるつながりについて、どのようなことが契機となって境界を越えたネットワークが形成されたか研究していく。 19世紀作家について地域的には東部作家の中のネットワークをこれまで見てきたが、南部、さらに東洋とこれまで注目されてこなかった地域とのネットワークにも注目したい。本年、『アメリカン・マインドの音声』(小鳥遊書房)に寄稿した「音とオカルトーハーマン・メルヴィルとラフカディオ・ハーンのコスモポリタニズム」で研究したコスモポリニズムとアメリカン・キャラクターの関係についてさらに研究し、発展させたい。
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Causes of Carryover |
2020年3月に予定していた出張を新型コロナウイルス感染拡大のため取りやめたことにより残額が生じた。今後も感染状況により出張などが難しい場合は、図書館サービスのコピーや、オンラインデータベースの利用、またはオンラインを使った面談による会議など、資料・情報の確保を検討する予定である。
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Research Products
(4 results)