2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K02553
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
若林 麻希子 青山学院大学, 文学部, 教授 (50323738)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / ジェイムズ・フェニモア・クーパー / 建国期アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度には「ジェイムズ・フェニモア・クーパーのアメリカの語り方―Littlepage三部作を中心に」と題する研究発表を、日本アメリカ文学会東京支部3月分例年会(2019年3月23日慶應義塾大学三田キャパス)において行った。クーパーは、19世紀前半の建国時代にアメリカ文学の「アメリカらしさ」を積極的に追求した作家として評価されてきた。本発表では、そのようなクーパーのアメリカ言説が、地方主義的イマジネーションに裏打ちされている修辞的内実を、晩年に執筆されたリトルペイジ三部作を取り上げることによって、明らかにした。民主主義国家としてのアメリカ合衆国の発展とは、ニューイングランドの西漸運動による、ニューヨークの地方主義的伝統の破壊以外の何物でもないとするクーパーの思想を明らかにすることが出来た。 アメリカにおける国民文学創生の営みは、これまでニューイングランドを主流として理解されてきたが、ニューヨークを視軸に捉え直すことの意義がかなり明確になってきたと考えている。アメリカにおける国民文学の創生の道のりとは、文化的覇権をめぐるニューイングランドとニューヨークとの間の競合に他ならず、アメリカ文学というものが、本質的には、地方主義文学として理解される可能性が浮上してきた。 本科研費研究の目指すところは、ヤングアメリカ運動が、いかにアメリカン・ルネッサンスと呼ばれる国民文学開花の現象と接続しているかを考察し、国民文学創生におけるニューヨークの役割を明確化することにあったが、むしろ、ヤングアメリカ運動を視座に、アメリカン・ルネッサンスという概念自体を流動化し、アメリカ文学が地方主義文学として展開するその様相に一定の理解を開くことが出来るのではないかと考えている。その有望な考察対象として、Nathaniel Hawthorneを想定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現段階ではおおむね順調に進展していると言える。しかし、当初予定した作家以外の作家に考察を広げる必要性があるため、関連学会への参加、関心を共にする研究者との意見交換を積極的に行うことによって、万が一の際に備える。
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Strategy for Future Research Activity |
Nathaniel Hawthorneを取り上げ、ニューヨークとニューイングランドの地方主義的葛藤が、如何なる過程、展開を見せるか考察する。そうすることによって、アメリカン・ルネッサンスという概念を流動化する、地方主義文学としてのアメリカ文学の新たな流れを提示する。Nathaniel Hawthorneの初期作品を主な考察対象とするが、当初予定していた作家ではないため、基礎研究資料を速やかに収集する必要がある。必要であれば、アメリカの現地図書館での資料収集も検討する。
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Causes of Carryover |
2018年度、当初予定していたアメリカへの資料収集・調査を、二つの学会での研究発表の準備等の理由で実施することが出来なかった。次年度のHawthorne研究のための資料調査および成果発表の為の旅費として主に使用する予定である。
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