2017 Fiscal Year Research-status Report
Research on the Aspects of Poetic Imagination in Northern Ireland in the age of the post-conflict and Brexit
Project/Area Number |
17K02554
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 亨 青山学院大学, 経営学部, 教授 (40245337)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | アイルランド / 北アイルランド / 英国 / ヨーロッパ / ブレグジット / 紛争 / インターフェイス / ネーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は論文3本(アイルランドおよび北アイルランドに関するもの、そして広くヨーロッパ文化に関するもの)を執筆し、夏には主にベルファストで現地調査を行った。 論文の内容は具体的に以下のとおりである。北アイルランド詩人を直接扱ったものはなかったが、北アイルランド現代詩の源流とみられるパトリック・カヴァナを論じたもの(「パトリック・カヴァナ イニスキーン・ロードからラグラン・ロードへ――田舎者詩人の上京」、『文学都市ダブリン』所収)、そして、北アイルランド詩人シェイマス・ヒーニーを含め、アイルランドに根づくケルトの文化を射程に入れ、広くヨーロッパのペイガニズムについて論じたもの(「ペイガンをめぐって――周縁文化についての一考察」『青山経営論集』52号)、さらに現代詩の代表的詩人T.S.エリオットのヨーロッパ観を検証したもの(「ヨーロッパ人に成らん――J・M・クッツェーのT.S.エリオット論をとおして」『T.S. Eliot Review』)である。3本中2本はヨーロッパを扱い(政治経済的というより、精神的な面を)、ブレグジットの問題と関連する。 夏には約一週間、現地調査を行った。ベルファストとデリーを中心にインターフェイスの状況、ミューラルのテーマなどの変化について調べた。その際、住民の生の声に触れ、より関心が高まった。今後も現地の友人含め、研究協力者とはEメールなどで頻繁に連絡を取っていくつもりである。現在、夏の調査を踏まえ、『北アイルランドを目撃する』を執筆中である。本書は写真と文章で北アイルランドの現在を紹介し、当地が抱える独特の問題を提起するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
直接、ブレグジットを扱った研究はまだないが、ヨーロッパとは何かという側面からEUについて検証しているので、今後の研究に結びつくと考える。また、課題テーマ中、ポスト紛争における北アイルランドの詩的想像力については、この夏を含めたミューラルとグラフィティ調査を踏まえ、現在、『北アイルランドを目撃する』を執筆中である。また、計画段階ではあるが、歴史研究者とともに、アイルランドとEUの問題、さらに北アイルランドとブレグジットの問題についてのシンポジウムを企画している(日本アイルランド協会の年次大会にて)。このシンポジウムに向けて研究が進めば、いっそうの成果と新たな視座を得ることが期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは現在執筆中の『北アイルランドを目撃する』を今年度中に出版することが短期的な目標である。残る研究期間中、最初の1,2年で紛争の歴史と紛争後の問題をインターフェイスという視点から再検討したい。されにあたり、精読予定のものは以下の2冊である。Brian Feeney, Pocket History of The Troubles (O’Brien, 2007), Gordon Gillespie, A Short History of The Troubles (Gill and Macmillan, 2010).前者は小著ながら知見にあふれているので、できればところどころ、翻訳したい。また、武装組織の歴史についてはBrendan O’Brien, A Pocket History of the IRA (O’Brien, 1997), Martin Dillon, The Shankill Butchers (Routledge, 1999), Ian S Wood, God, Guns and Ulster: A History of Loyalist Paramilitaries (Caxton, 2003)などを参照したい。 詩についてはMichael Longleyの詩を中心的に読みたい。テキストは以下の通りである。Michael Longley, Collected Poems (Jonathan Cape, 2007).合わせて次の書も参照にする。Fran Brearton, Reading Michael Longley (Bloodaxe Books, 2006). 本年度は出版予定の著書のほかに、シェイマス・ディーンについての論文とブレグジットについて口頭発表を行いたい。
|