2020 Fiscal Year Research-status Report
ウィリアム・フォークナーの作品における住まいと暮らしに関する研究
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17K02555
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
島貫 香代子 関西学院大学, 商学部, 准教授 (30724893)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / ウィリアム・フォークナー / American Literature / William Faulkner |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍で国内外の出張がなくなり、学会活動が中止またはオンライン開催になる中、2020年度はフォークナー作品に関する論文執筆に注力した。本研究の目的に沿うかたちで、フォークナー作品で描かれる住まいと暮らしのあり方を、人種とエスニシティの観点から考察した。具体的な研究成果は以下の通りである。2019年12月に「アメリカ文学と人種」をテーマにしたシンポジウムで口頭発表を行ったが、その内容が論文「ジム・クロウ時代の南部で生きる――「あの夕陽」における人種意識の形成」として日本アメリカ文学会北海道支部の機関誌『北海道アメリカ文学』に掲載された(発行日は2020年3月だが2020年9月に刊行された)。この共同研究を通じて、他のアメリカ文学者とともに有意義な情報交換や意見交換を行うことができた。その他、論文「多様な人々、一様なふるまい――『野性の棕櫚』におけるジム・クロウの影響」が共著『テクストと戯れる――アメリカ文学をどう読むか』(高野泰志・竹井智子編、2021年3月)に、論文「パリのアメリカ黒人――1920年代半ばのフォークナーの人種意識」が所属大学の紀要『言語と文化』(2021年3月)に、それぞれ掲載された。 これらの論文執筆と同時に、一年間を通じて研究課題に関連する文献資料を収集・精査した。こうした資料収集を通して、フォークナー以外の作家、アメリカ南部以外の場所、20世紀前半以外の時代にも目を配り、広い視野を持つことができた。さらには舞台芸術や音楽といった文学の隣接分野からも大きな示唆を得た。これらの継続的な研究活動は、上記の具体的な研究成果に大なり小なり寄与している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で現地調査はできていないが、一定の研究成果を収めることができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、これまでに行った現地調査の結果や資料収集の精査をもとに、フォークナーのヨクナパトーファ初期・中期作品に焦点を当て、ヨクナパトーファ世界の構築にいたる経緯と、奴隷制と人種問題について、住まいと暮らしにまつわる表象を通して考察することに注力する。具体的な研究成果としては、所属学会で研究発表を行い、所属大学の紀要に論文を寄稿する予定である。それと同時に、フォークナー作品とアメリカ文学全般に関する資料収集と文献精査を継続的に行う。コロナ禍の影響で現地調査は予定していない。なるべく広い視野で研究を進めるべく、所属学会や研究会において他のフォークナー研究者やアメリカ文学者などと情報・意見交換を積極的に行うよう心がける。
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Causes of Carryover |
2020年に入って世界中で急速に感染が拡大した新型コロナウイルスの影響を鑑み、補助事業期間を延長し、次年度に今回実施できなかった内容に関する研究成果をまとめることになった。
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