2018 Fiscal Year Research-status Report
現代社会における老い―ジョン・アップダイクと「老い」の表象
Project/Area Number |
17K02570
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
柏原 和子 関西外国語大学, 英語キャリア学部, 教授 (90330216)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ジョン・アップダイク / 老い / Seek My Face / The Widows of Eastwick |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度はジョン・アップダイクの晩年の作品における「女性の老い」をテーマに国際会議で口頭発表を行い、その発表原稿をさらに発展させて執筆した論文を大学の研究論集に発表した。前年度までに収集した資料を基に、アップダイクの晩年の作品のうち高齢女性を主人公にしたSeek My Face(2002)とThe Widows of Eastwick (2009)を取り上げ、これらの作品のヒロインたちが自己を確立することでproductive agingという新たな高齢期の生き方を体現していることを論じた原稿を、6月にセルビアのベオグラード大学で開催されたThe 5th Biennial Conference of the John Updike Societyにて発表した。 またこの原稿に作家の女性観や女性の描き方の変遷を世界観の確立と併せて論じた部分を加筆して「ジョン・アップダイクが描く女性の『老い』ーSeek My FaceとThe Widows of Eastwickを中心に-」と題した論文を執筆して関西外国語大学研究論集第109号に発表した。ヒロインたちの老いの疎外やその克服は他の作品中の男性主人公たちのそれと何ら変わることはなく、自己の存在意義を確認することで人は疎外を免れ、老いを受容できるとするアップダイクの認識を読み取ることができる。また現代社会においては高齢者観も変化し、肯定的な高齢者観が現れるようになってきたが、それが作者の「老い」の表象に影響を与えた可能性も否めない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画のうち、前半の「女性の老い」の研究については順調に達成できたが、後半の「最晩年の老い」の研究がはかどっていない。プライベートな理由になるが両親の死亡とその後始末および相続問題で長期休暇中の時間を取られ、研究に十分な時間が取れなかったことが原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
夏期休暇中に再度、ハーバード大学の図書館でアップダイク「最晩年の老い」についての資料を収集すると共に、最後の詩集Endpoint and Other Poems (2009)と短編集My Father's Tears and Other Stories (2009)に描出された「老い」の表象を研究し、作家が死に直面してもなお、「老い」や「死」を平静に受容できたのか否かを考察し、論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
セルビアでの国際会議のための旅費が予想より低額であったために、支出が低く抑えられた。余剰分は資料収集のための渡米の費用の一部に充当する予定である。
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