2019 Fiscal Year Research-status Report
現代社会における老い―ジョン・アップダイクと「老い」の表象
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17K02570
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
柏原 和子 関西外国語大学, 英語キャリア学部, 教授 (90330216)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ジョン・アップダイク / 老い / 世界観 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は執筆依頼があったこともありジョン・アップダイクと同時代の作家ソール・ベローとの比較により、作家の「老い」に対する考え方に大きく関わる世界観の原型がすでに30代の頃からある程度、定まっており、それが晩年に完成した「受容」に通じるものであったことを論証する論文を執筆した。ソール・ベローがユダヤ教の「修復」の概念を生き方や世界観の基盤として「人は神が創造したこの世を修復していく義務がある」と考えるのに対し、キリスト教ルター派の特徴である「受容」を世界観の基盤とするアップダイクは不完全なものも邪悪なものもすべて神の創造物として受容する。激動の1960年代の終わりに両作家が執筆した月をモチーフにした小説を比較することにより両者の違いを浮き彫りにし世界観を明らかにした。この論文は「ソール・ベローの”修復”とジョン・アップダイクの”受容”ー『サムラー氏の惑星』と『帰ってきたウサギ』を中心に」のタイトルで、日本ソール・ベロー協会編『ソール・ベローともう一人の作家』(彩流社)の第8章として収録された。 春期休暇中に再度、ハーバード大学のHoughton Libraryへ資料収集に行く予定であったが新型コロナウイルス由来の渡航制限のため、行くことができなかった。またアップダイク最晩年の「老い」についての研究が遅れているため、1年間期間延長を申し出て許可された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
アップダイク最晩年の「老い」についての研究がかなり予定より遅れている。理由はプライベートなものであるが、過去3年の間に両親が相次いで他界し、実家の片付けや相続問題などにかなり時間を取られ、研究に十分な時間を割くことができなかったことである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はこの研究の最終年度であり何としても研究成果をまとめなければならない。秋に予定されていたジョン・アップダイク学会の国際会議が来年に延期されてしまったので、ここで発表を予定していた原稿を論文として手直しし活字で出版する予定である。これをもって本研究のまとめとなるようにするつもりである。
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Causes of Carryover |
研究が大幅に遅れており一年間期間延長を申し出て許可されたため。 使用計画としては主として資料収集と在米研究者との意見交換のための渡米費用と図書の購入に充当する予定である。
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