2017 Fiscal Year Research-status Report
Words and Corporeality in the Major Writings of John Dos Passos: Possibility of Literary Arts
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17K02574
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
三杉 圭子 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (90267914)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | John Dos Passos / 言語芸術 / 身体性 / 共感 / 非言語コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
ジョン・ドス・パソスの言語芸術における言葉と身体性を検証するにあたり、本年度は感覚や情動に着目するアフェクト研究におけるさまざまな文学批評の試みを参照し、本研究の理論的枠組みの措定に努めた。また作品研究においては、1920年代のサッコ・ヴァンセッティ冤罪事件をめぐるドス・パソスの著述を検証した。具体的には、『電気椅子に向かって』(1927)に収録されたエッセイ、そして後の代表作『U.S.A.』三部作の『ビッグ・マネー』(1936)における関連箇所を精査した。その結果ドス・パソスは、ずさんな審判過程において言葉が持つ本来の意味と力が剥奪された言語状況を厳しく糾弾し、それを打開するひとつの可能性として、言語を越えた身体感覚を経由した共感性を提示していることが明らかになった。投獄されたサッコとヴァンゼッティのインタヴュー記事における二人の身体性へのまなざし、『ビッグ・マネー』における彼らの苦痛に同化する支持者たちの無言の行進、そして歌声の記述には、非言語コミュニケーションが可能にする人びとの連帯が示唆されているといえよう。この考察の成果は“Words and Corporeality in Dos Passos’s Writings on the Sacco-Vanzetti Case”として5月のAmerican Literature Association 28th Annual Conference(於Boston)で発表した。さらに『マンハッタン乗換駅』における身体性に注目した考察 “Captivated by Words: Jimmy Herf’s yearning for corporeal experience in Manhattan Transfer”を2018年6月の3rd Biennial John Dos Passos Society Conference(於 Lisbon)で発表することが 決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドス・パソスが代表作『U.S.A.』を執筆するうえで大きな契機となったとされるサッコ・ヴァンゼッティ裁判をめぐる著述を精査し、それらの記述における言葉の限界や虚偽性、そしてオルタナティヴとしての身体性への考察を深めることができた。同時に、1920年代のドス・パソスの政治的活動についての資料を検証することで、作家と彼の時代特有の状況を理解することができた。 また、時代も状況も異なる作家ソール・ベローの作品における、言葉への依存からの脱却、身体性の回復を模索する試みを論じ、「言葉の捕囚を超えて--「失言魔の彼」」日本ソール・ベロー協会編『彷徨える魂たちの行方』(彩流社、2017年、pp. 73-92)として発表した。ドス・パソスとモダニズム芸術に焦点を合わせるうえで、他の作家作品との比較も本研究に資するものとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は『マンハッタン乗換駅』における主要人物の言語依存と移民の身体性について考察し、2019年度以降の『U.S.A.』分析につなげていきたい。今後は並行して、文学以外のモダニズム芸術との関連についての検証を進め、ドス・パソスの創作とほかの芸術分野との交渉について考察を広げたい。
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Research Products
(3 results)