2018 Fiscal Year Research-status Report
Words and Corporeality in the Major Writings of John Dos Passos: Possibility of Literary Arts
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17K02574
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
三杉 圭子 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (90267914)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ジョン・ドス・パソス / 身体性 / 『マンハッタン乗換駅』 / アメリカの民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジョン・ドス・パソスの代表的小説群のうち、最初のモダニズム小説『マンハッタン乗換駅』(Manhattan Transfer 1925)をとりあげ、作品における言葉と身体性の関係性を主人公ジミー・ハーフとフランス系移民コンゴ・ジェイクの表象をとおして考察した。作家志望のジミーは大都市ニューヨークで様式化され腐敗した言葉に囚われ疲弊している。建国の父たちがアメリカの理想を語った「古の言葉」は枯渇したように思われるが、ジミーは身体性の希求をとおして自らの創作を活性化しようと試みている。他方移民のコンゴは裏社会で成功し財を成しているが、彼は義足によってその身体性を拡張し、「アメリカの夢」を実践しているとも言える。ゆえに『マンハッタン乗換駅』は身体性と文学の言葉、そしてアメリカの民主主義との統合を考察する作品として読むことができる。この成果は6月にリスボンで開催されたThe 3rd Biennial John Dos Passos Society Conferenceで発表し、のちに改稿して “Jimmy Herf's Yearning for Corporeality in Manhattan Transfer”として公開した。 またドス・パソスが1920年代に携わったニューヨークにおける演劇活動をとりあげ、その実験がいかに1930年代の代表作『U.S.A.』における語りの技法へ発展したかを検証する試みに着手した。その成果は2019年5月のAmerican Literature Association 30th Annual Conference で発表することになっている。 並行して2017年に学会発表した論考 "The Lost Generation and U.S. Trans-Atlantic Imperialism in 1919" に加筆してJohn Dos Passos Societyに入稿した。SocietyはUniversity of Tennessee Pressからの出版を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドス・パソスの最初の代表的作品『マンハッタン乗換駅』における言葉と身体性を検証することができた。これまであまり注目されてこなかった移民の登場人物コンゴ・ジェイクを論じることで、ドス・パソス作品における身体性と文学、そしてアメリカの民主主義との関係性について理解を深めることができた。 1920年代のドス・パソスの演劇活動は身体性への関心の直接的表れであり、舞台美術も担当することで造形芸術と文学の融合を試みたことも明らかである。戯曲の演出・美術に加え、同時代のロシア演劇、モダニズム絵画・バレエ・音楽などの影響の分析は彼の最大の代表作『U.S.A.』を考察に資することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度はまず1920年代のドス・パソスの実験的演劇活動を舞台・造形芸術など他分野からの影響とともに検証し、代表作『U.S.A.』における語りの技法への発展を考察したい。その後『U.S.A.』における身体性の考察に着手する予定である。
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Research Products
(2 results)