2019 Fiscal Year Research-status Report
Words and Corporeality in the Major Writings of John Dos Passos: Possibility of Literary Arts
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17K02574
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
三杉 圭子 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (90267914)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ジョン・ドス・パソス / モダニズム / ニュー・プレイライツ・シアター / コラージュ |
Outline of Annual Research Achievements |
ジョン・ドス・パソスの代表作『U.S.A.』における身体性の表現は、作家が1920年代に積極的に関わった演劇活動がその源泉のひとつであることを検証した。第一次世界大戦終了後、ドス・パソスはモダニズム作家として多様な前衛芸術に関わった。彼はヨーロッパでは実験的な演劇や舞台美術に触れ、ニューヨークでは戯曲家、そして劇団ニュー・プレイライツ・シアターの監督として活動した。彼は当時の前衛演劇から多くのインスピレーションを得、様々な技法を学んだ。1930年代に発表された『U.S.A.』三部作で、「ニューズリール」、「カメラ・アイ」、歴史上の人物の伝記的スケッチ、そして虚構の登場人物の物語、といった異なる語りの話法を巧みに組み合わせたのはその成果である。ドス・パソスにおける身体的芸術表現としての演劇の重要性を確認し、戯曲家および劇団の監督としての彼の仕事を検証した。さらに、ドス・パソスがヨーロッパの前衛的な演劇や舞台芸術をとおしてコラージュおよびモンタージュ技法と遭遇したこととその意義を考察した。戯曲家、監督としてのドス・パソスの試みは失敗に終わったものの、前衛演劇との関わりは、彼の文学上の実験を推し進め、三部作において斬新な語りの技法を成功させる原動力となったのである。この考察は5月にボストンで開かれたAmerican Literary Association第30回年次大会における “Dos Passos and/in the 1920s”で “Theatrical Experiments and Aesthetic Distance: John Dos Passos in the 1920s”として発表し、その後リサーチを発展させて論文 “John Dos Passos’s Corporeal Experimentations through 1920s” として公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジョン・ドス・パソスの言葉と身体性を検証するにあたり、彼の身体性への関心の表れを演劇・舞台芸術との関連において検証した。その結果、1920年代の演劇活動およびヨーロッパの前衛芸術との遭遇が、重要なインスピレーションであったことが証明できた。特にソヴィエトの演劇活動、友人ジェラルド・マーフィが手がけたオペラWithin the Quotaの舞台芸術をめぐる考察は、彼の代表作『U.S.A.』理解に新しい知見をもたらすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はこれまでの成果をふまえて『U.S.A.』における言葉と身体性の考察を深化させ、他のモダニズム文学との共振についても考えたい。しかしCOVID-19の影響で参加を予定していた第4回John Dos Passos Society Conferenceは延期が決定し、アメリカにおける資料調査も実現の見通しが立たない。場合によっては対象領域縮小の検討が必要かと思われる。
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Research Products
(2 results)