2017 Fiscal Year Research-status Report
19世紀アメリカ文学とテクノロジーの交錯にみるサイエンス・フィクションの原風景
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17K02577
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
中村 善雄 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (00361931)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 英米文学 / サイエンス・フィクション / 怪物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、脱ジェンダーに伴うサイボーグ的存在、あるいはデカルトの人間機械論を越える感情を有したオートマトンといった存在に着目し、ナサニエル・ホーソーンの作品をポストヒューマン的言説と絡ませて、サイエンス・フィクションの枠組みの中で再検討した。同時に作品成立の背景として、レオ・マークスを端とする、19世紀中葉以降にアメリカに導入された機械文明の影響が人間や環境に齎した波及効果をホーソーンやメルヴィル、ポーの作品において考察した。その研究成果が、2017年6月刊行の『エコクリティシズムの波を越えて―人新世の地球を生きる』(音羽書房鶴見書店)に所収された「ナサニエル・ホーソーンはポストヒューマンの夢を見るか」である。また、19世紀のメディア(・テクノロジー)の発展によって、ファンタズマゴリックな世界を生み出した世紀末パリを舞台に、そのスペクタクル性によって翻弄されると共にオルタナティブな視点を獲得した主人公の意識の変容を辿ったヘンリー・ジェイムズ論「文化装置による意識の変容―ジェイムズの『使者たち』における幸福の行方」が2018年2月出版の『アメリカ文学における幸福の追求とその行方』(金星堂)に掲載された。また、2017年10月に彩流社から出版された、ユダヤ聖歌とジャズの共振性を論じた論文「「聖」と「俗」が奏でる音楽の相克と親和性-映画『ジャズ・シンガー』(1927)」が『ユダヤ系文学における聖と俗』に所収された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、2016年に『エコクリティシズム・レビュー』No.9に所収された論文に大幅な加筆修正を加えた論文「ナサニエル・ホーソーンはポストヒューマンの夢を見るか」を、2017年6月に刊行された『エコクリティシズムの波を越えて―人新世の地球を生きる』(音羽書房鶴見書店)に掲載した。また、メディア・テクノロジーの進展に伴うスペクタクルな文化装置が人間の意識に及ぼす影響を論じたヘンリー・ジェイムズの作品論「文化装置による意識の変容―ジェイムズの『使者たち』における幸福の行方」が『アメリカ文学における幸福の追求とその行方』(金星堂、2018年2月)に所収された。ゆえに本年度の研究成果という点からすれば、順調な進捗状況であると考えている。一方で、ハーバード大学やヴァージニア大学での文献収集を予定していた夏季休暇期間に、論文執筆の依頼や夏季集中講義があり、十分な時間が確保できないと判断し、海外での調査研究を断念した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度発行の学術図書への所収論文の執筆と同時に、ヘンリー・ジェイムズの後期作品をサイエンス・フィクションとの親和性という枠組みの中で考察するために、資料収集を進め、その検討を加えており、今後その研究成果を英米文学関連学会での研究発表あるいは学術図書の所収論文として発表する予定にしている。その過程の中で、当該課題の更なる推進を図るため、今年度実施できなかった長期休暇期間中の海外での文献収集や調査研究を遂行したいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由は、本年度の夏季休暇期間中に予定していたリッチモンドやボストン(特にヴァージニア大学やハーバード大学)での数週間の調査研究及び文献収集が、依頼された原稿執筆や夏季集中講義のために時間確保ができず、旅費の実支出額が当初見積りを下回ったことが主な原因である。次年度においては、夏季あるいは学年末休暇を利用して、今年度できなかった海外での調査研究を実施する予定にしている。また次年度においては、当初計画通りに本研究の関連図書及び実施遂行に必要な物品の購入並びに研究成果の発表や情報収集のために学会・研究会に出席するための旅費として助成金を使用する予定にしている。
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Research Products
(7 results)