2020 Fiscal Year Research-status Report
19世紀アメリカ文学とテクノロジーの交錯にみるサイエンス・フィクションの原風景
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17K02577
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
中村 善雄 京都女子大学, 文学部, 准教授 (00361931)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヘンリー・ジェイムズ / サイエンス・フィクション / 四次元思想 / パラレルワールド |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度は19世紀末に流行した四次元思想における時間の相対化について検討したが、本年度は同じ思想的バックボーンから生じた空間の相対化についての研究を進めた。つまり、時間の相対化の概念がタイムマシン物語誕生の背景的知識となったのと同様に、空間の相対化を具現化した四次元的空間のモデルが、同時代に発表されたオルター・エゴやドッペルゲンガーが登場する作品の枠組みと親和性が有るのではないかとの想定を基に考察した。具体的には、従来幽霊物語として分類されているHenry Jamesの小説を射程に入れ、これをパラレルワールド的世界観を有する作品として、オルタナティヴに解釈する可能性を追求した。その段階的な成果を学会発表する予定であったが、コロナ禍のため延期となった。しかし、本研究の派生として、3月には日本ナサニエル・ホーソーン協会関西支部シンポジウムにて、霊媒としてのタイプライターの役割に着目した「私的空間のジェイムズと女性タイピスト―現実/想像の声を聞く」と題した論考を発表した。その他、大阪教育図書より出版された『回帰する英米文学―時代を生き抜く<学び>とは』にて、"Origins of Henry James, the Dramatist: Reflections on His Early Plays"と題した論考や、彩流社より出版された『ジューイッシュ・コミュニティ:ユダヤ系文学の源泉と空間』に、マジックリアリズムの手法を取り入れ、霊界のサタンを具現化させた映画『幸せ色のルビー』を主題とした論考を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は19世紀末に流行した四次元思想から生じた空間の相対化という問題に着目し、その波及効果を同時代の作家Henry Jamesの作品に検証してみた。一定の成果を得たが、コロナ禍の影響により、予定されていた研究発表の機会が失われ、その成果は公表できなかったが、本課題から派生した論考については別のシンポジウムにて発表を行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度において進めてきた、Jamesに対する四次元思想の全般的な影響と、空間の相対化という概念がJamesの作品に与えた具体的影響をさらに詳しく検証していき、その成果を学会ならびに論文によって発表していく。次年度は本課題の最終年となるので、Jamesを含む19世紀アメリカ作家たちをプロト・サイエンス・フィクションの担い手として位置づけると共に、彼らのオルタナティブな相貌を明らかにしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度はアメリカ文学やテクノロジー関連図書を購入したが、コロナ禍のために学会への出席がなく、予定していた旅費の執行がなかったので、使用予定額に差異が生じた。そのため本研究課題の延長措置を講じ、翌年度も当該研究課題に資する図書購入を行うと共に、今年度に延期となった学会発表をするために、出張費として予算を使用するつもりである。但し、オンライン形式での発表が普及してきているので、出張経費は執行しない可能性も視野に入れながら、計画的に予算を執行していく所存である。
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Research Products
(3 results)